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ラヴァマン、西海岸古馬3大G1完全制覇達成

  • 2006年08月22日(火) 23時59分
 8月19日(日曜日)、カリフォルニアのデルマー競馬場で、アメリカ競馬史上初めてという大記録が達成された。この日行われた古馬によるダート10Fの100万ドルレース、G1パシフィッククラシックを、単勝2倍の1番人気に推されたラヴァマン(セン5歳、父スルーシティースルー)が制覇。3月に行われたG1サンタアニタH、7月に行われたハリウッドGCを既に制しているラヴァマンは、西海岸における主要3場で行われる古馬の3大G1完全制覇という、これまでどの馬も達成したことのなかった記録を打ち立てたのである。

 2年前の8月、同じデルマー競馬場のクレイミングレースで、現在の馬主スティーヴ・ケンリーとジェイスン・ウッドのために、トレーナーのダグ・オニールが5万ドルでクレーミングしたラヴァマンは、これで収得賞金が350万ドルを突破。ダグ・オニールは、アメリカンドリームを実現した立役者となった。

 4歳春に素質が開花し、G2カリフォルニアンSで重賞初制覇を飾ると、続くG1ハリウッドGCを8.3/4馬身差という、レース史上最多の着差をつけて圧勝し、トップホースの仲間入りを果たしたラヴァマン。だがシーズン終盤は、東海岸のG1ジョッキークラブGC・7着、JCダートが11着と、竜頭蛇尾の成績で昨シーズンを終えた。

 だが、今季のラヴァマンは、更にもう一皮むけた。管理するダグ・オニールをして、「何が彼をここまで変えたのか、正直に言えばわからない」とコメントしているのだが、5歳となったラヴァマンは突然にして、無敵のスーパーホースに変身した。1月のサンシャインミリオンクラシックからパシフィッククラシックまで、6戦6勝。しかも、西海岸古馬3大G1完全制覇に加えて、6月には芝のG1チャーリーウィッティングハムHも制しているという、驚くべき内容の快進撃を続けているのである。

 アメリカのトップホースにとって、秋最大の目標はブリーダーズCだが、実はラヴァマンにはそのブリーダーズCの登録がない。だが陣営は、「ここまで来たら、出ないわけにはいかないだろう」と、追加登録料を払ってBCクラシック(11月4日、チャーチルダウンズ)に参戦することを決断。そのプレップレースとして、10月7日にサンタアニタで行われるダート9FのG2グッドウッドHか、9月30日に同じサンタアニタで行われる芝10FのG1クレメント・ハーシュ・ターフチャンピオンシップのいずれかを使うことが検討されている。

 当然のことながら、年度代表馬の座に最も近い存在となっているラヴァマン。だが現状のままでは、歴史に残る名馬と認定されるまでには至っていない。なぜなら、これまでのラヴァマンの実績は地元のカリフォルニアのレースに限られており、カリフォルニアから外に出た3戦はいずれも7着以下に大敗を喫しているのである。逆に言えば、アウェイでの戦いとなるチャーチルダウンズのBCクラシックまで無敗で突っ走り、今季の成績を8戦8勝とすることが出来れば、スペクタキュラービッド(1980年に9戦9勝)、シガー(1995年に10戦10勝)といった馬たちと比較対象される存在となりうるのである。ラヴァマンの今季残り2戦は、世界中が注目することになりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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