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ワールドランキングへの異議

  • 2007年01月23日(火) 23時52分
 日本時間で先週の水曜日(1月17日)に発表になった、06年度のワールド・サラブレッド・レースホース・ランキング(WTRR)。ディープインパクトのレイティング127で世界第4位という評価は、私たち日本のファンから見ても、満足のいく結果だったと思う。本来なら凱旋門賞だって勝つ力はあって、レイティング的にも世界首位を狙える馬だったと信じているが、結果として凱旋門賞を勝てなかった以上、世界的に見たらこの程度の評価が妥当なのだろうというのが、大方のファンの見るところであろう。

 ところが、「この評価は不当だ」と、各国公式ハンディキャッパーが決定したランキングに異議を唱える声が、国外の複数のジャーナリストから沸き起こって、いささか面を食らっている。異議と言ったって、ディープインパクトと凱旋門賞馬レイルリンクが同斤というのはおかしいというような、ディープに対して逆風となる意見が出ているのではない。「ディープインパクトこそ、06年のワールドチャンピオンであるべきだ」という声が、あちこちから聞こえてきているのである。

 例えば、英国のレイシングポスト。英国はもとより、欧州各国の競馬関係者がこぞって定期講読しているこの超メジャーな競馬日刊紙は、レイシングポスト・レイティング(RPR)という独自の能力値を査定し紙面で随時発表している。このレイシングポストのレイティングによると、06年の世界チャンピオンは、有馬記念で133という数字を獲得したディープインパクトなのである。WTRRで首位のインヴァソールは、RPRでもWTRRと同じ129というレイティングだから、何とRPRはディープをインヴァソールよりも4Pも高く評価しているのである。RPRは、3歳のディスクリートキャットやジョージワシントンもインヴァソールよりは高く評価しているのだが、それでもレイティングは131だから、ディープインパクトは紛れもなく世界一の評価なのであった。

 レイシングポスト編集部におけるRPR担当責任者のポール・カーティスは、公式ハンディキャッパーたちは日本の競馬のレベルを低く見すぎており、これは実に保守的な考え方であると、ばっさりと斬り捨てている。

 或いは、同じレイシングポスト紙の名物記者ポール・ヘイグ。日頃から「ディープ・マニア」を自認して憚らぬ記者だけに、WTRRが発表された直後に「Inexplicable =不可解」との大見出しともに掲載された自身のコラムでは、「なぜディープが首位じゃないのだ!」と、おおいに吠えている。ポール・ヘイグも、ディープインパクトの有馬記念におけるレースを、「世界のどの馬よりも優れている。それも単に優れているだけではなく、図抜けて優れている」と評価。見た目の派手さだけではなく、このレースで3着に完敗したダイワメジャーとは、香港Cでプライドと鼻差の勝負をしたアドマイヤムーンに、秋の天皇賞で1馬身以上先着している馬なのだと、ロジカルな分析を施した上で、ディープ世界一を唱えているのである。

 或いは、香港の英字新聞で競馬欄が最も充実してりいるサウス・チャイナ・モーニングポストのベテラン記者マーレイ・ベル。彼もまた、有馬記念の直後、「自らの35年の競馬記者生活で出会った、最も印象的な馬である」と、ディープインパクトに最大級の賛辞を送っている。

 日本人として、実に誇らしい限りである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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