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北米2歳セール・サーキット開幕

  • 2007年02月06日(火) 23時50分
 世界のブラッドストックマーケット・サーキットは、いよいよ2歳トレーニングセールの季節を迎えようとしている。

 この20年ほどの間に急速に拡大し、昨年はついに各社が各地で開催している市場の合計売り上げが2億ドルを突破した、アメリカの2歳市場。マーケットが今年はどんな動き方をするのか、その動向は日本の競馬にもおおいに影響を及ぼすだけに、行方が注目されるところだ。

 その第一弾となる「OBSセレクト2歳トレーニングセール」の1回目の公開調教が2月4日(日曜日)に行われ、牡馬2頭・牝馬1頭の3頭が2F21.0秒の好時計を計時した。

 1番時計をマークした最初の馬は、上場番号45番の父イエスイッツトゥルーの牡馬。父は現役時代、2歳重賞に2勝した後、3歳時に6FのG1フランク・デフランシス・メモリアルダッシュを制した馬だ。今年の2歳世代はその父にとって4世代目の産駒となるが、G1シャンパンS勝ち馬プラウドアコレイドをはじめ、父の特性だった「仕上がりの早さ」と「スピード能力」を忠実に継承した子を多く輩出している。本馬も間違いなく、そういうタイプであろう。

 2F21.0秒を叩き出した2頭目の馬は、上場番号65番の父ライトニングンサンダーの牡馬。父はストームキャットの直仔で、現役時代は良いスピードを示しながら故障で特別勝ちにすら手が届かなかった馬だが、母シングスチェンジがG1スピナウェイS勝ち馬という良血を買われて種牡馬入りし、この世代が初年度産駒となる。種付け料4千ドルというチープな種牡馬だが、昨年はイヤリングセールで10万ドルを超える価格で取引された馬も出ており、産駒の評判はなかなか良い。本馬は牝系も地味だが、自身のフィジカルな能力にどれだけの市場価値が与えられるか興味深い。

 1番時計をマークした3頭めは、上場番号176番の父フォレストワイルドキャットの牝馬だ。兄に、日本における現役のOP馬ダイワバンディット、叔母にアメリカで重賞3勝、G1ハリウッドスターレットでも2着となっているアドヴァンシングスター、叔父にアメリカの重賞勝ち馬ダービーフェアがいるという牝系で、最速時計を計時した3頭の中では飛び抜けて良い血統背景の持ち主である。父はストームキャット系らしい仕上がりの早さとスピードを売り物の種牡馬で、本馬も2歳戦の早い時期からの活躍が期待されるが、これに将来の繁殖牝馬としての価値が加味されて、どこまで値段が上がるか注目したい。

 1Fの最速時計は、上場番号1番の父ギヴソンカウンティーの牝馬がマークした10.0秒。父は現役時代2歳から5歳までタフに駆けた馬で、重賞には手が届かなかったものの、芝・ダートの両方で特別制覇を果たし、37万ドルの賞金を収得した馬だ。今年3歳の初年度産駒はわずか14頭しかいないが、このうち8頭がデビューして6頭が勝ち馬になるという、高い勝ち上がり率を示している。本馬も、まずは確実に1勝はしてくれるタイプだろう。

 この世代の馬たちをピンフッカーたちが仕入れた昨年のアメリカの1歳馬市場は、高い価格帯がおおいに盛り上がった一方で、中間から下の価格帯は落ち着いた動きを見せた市場も多かった。すなわち、ピンフッカーたちの中でも、かなり無理な仕入れをしたグループと、堅持な仕入れに終始したグループに色分けされており、そうした戦略の違いがどんな結果をもたらすかに、市場関係者の関心が寄せられている。

 この後、11日(日曜日)に2回めの追いきりが行われ、13日(火曜日)に行われる「OBS2歳セレクトセール」。その結果は、21日付けのこのコラムでお伝えする予定である。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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