昨年のセールで、父フォレストリーの牡馬に1600万ドル、日本円にして19億円という、世界のせり市場における歴代最高価格が飛び出した「ファシグティプトン・コールダー2歳セレクト・トレーニングセール」。今年の開催が3月6日(火曜日)に迫り、その1回めの公開調教が2月25日(日曜日)にコールダー競馬場で行われた。
1F、2F、それぞれの最速時計を叩き出したのは、いずれも、昨年の最高価格馬と同じ、フォレストリーの産駒だった。
1Fの最速時計となる10秒フラットをマークしたのは、上場番号57番の父フォレストリー・母マーチマジックの牝馬。母はG2モーリーピッチャーHをはじめ2つの重賞を制している他、G1フリゼットS、G1ゴーフォーワンドSでも3着となっている活躍馬である。昨年のキーンランド・セプテンバーセールで12万ドルで仕入れられている馬だが、まずまずの血統背景を持った馬がこれだけの時計を出したとあっては、仕入れ値を大きく上回る取引となるのは間違いなさそうだ。
2Fの最速時計となる21.2秒をマークしたのは、6日のセールでは一番最後に登場する、上場番号301番の父フォレストリー・母フリオタウンの牝馬。こちらも、兄にG2ビングクロスビーHをはじめ2重賞を制しているボウズタウンがいるという、なかなかの血統馬である。この馬も、昨年のキーンランド・セプテンバーにおける仕入れ価格18万ドルを大きく上回る値段で取引されることになりそうだ。
25日の公開調教では、残念な事故も発生した。昨年のファシグティプトン・サラトガセールで、90万ドルという高値でピンフックされた、上場番号10番の父ストームキャット・母ゴーントゥーザムーンの牡馬が、追いきり後に突然倒れ、息を引き取ったのである。詳しい死因は判っていないが、外傷は全く無いことから、心臓発作を起こしたものと見られている。コンサイナーは、昨年のこの市場で19億円の最高価格馬を売ったハートリー・デレンゾ・サラブレッズだから、まさに禍福はあざなえる縄の如しだ。
上記の90万ドルというピンフック価格に驚いた方も多いと思うが、実はこの値段、今年のファシグティプトン・コールダーセール上場馬の仕入れ値としては、最高価格ではないのだ。なんと、昨年のキーンランド・セプテンバーで100万ドルでピンフックされているのが、上場番号71番の父ストームキャット・母ムーンサファリの牡馬である。おじにG1ペガサスH、G1ジェロームHなどを勝って種牡馬となったスキャン、祖母の兄弟にクラシックホースにして名種牡馬のカーリアンがいるという牝系の出で、父がストームキャットだから、市場の相場からして100万ドルというのは驚くには値しない価格だ。その上場番号71番の25日の追いきり時計は、21.4秒という2Fでは2番めの好タイムだった。3月4日に予定されている2度めの追いきりで、よほどの良血馬がよほどの時計を出さない限り、今年の最高価格はこの馬になる公算が高そうだ。