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ファシグティプトン・コールダーセール結果報告

  • 2007年03月20日(火) 23時50分
 北米2歳トレーニングセールのプレミアマーケットである、「ファシグティプトン・コールダー2歳トレーニングセール」が、3月6日にフロリダ州コールダー競馬場で開催された。市況は、総売上げが前年比29.9%ダウンの4362万ドル、平均価格が前年比12.9%ダウンの351,790ドルという、数字面を見るとかなりショッキングな結果となった。

 ただし、1年前を思い出していただきたい。父フォレストリーの牡馬に1600万ドル、日本円にしておよそ19億円という、世界の競走馬せり市場における歴代最高価格が飛び出したのが、昨年のこのセールであった。このたった1頭が全体の指標を大きく動かして、昨年は総売り上げ、平均価格ともファシグティプトン・コールダーのレコードを記録したのだが、実を言えば、1600万ドルホースを除いた06年の平均価格は、301,816ドルであった。これを基準値とすれば、今年の平均価格は前年比16.6%アップとなるのだ。更にその1年前、05年のこの市場の平均価格が341,034ドルで、これも当時としてはこのセールの歴代レコードだったから今年の平均価格351,790ドルというは、実はそれほど悪い数字ではないと分析するが出来る。

 また、今年の中間価格25万ドルは前年比にして12.5%アップで、こちらは正真正銘のセール歴代最高記録であった。皆さま御承知のように、セール直前に中国の上海を皮切りとした世界同時株安が起こり、その影響が心配されていたことを考えれば、むしろ上首尾と言えなくもない市況となった。しかし一方で、今年のマーケットは問題点も露呈しており、その最たるものがバイバックの多さであった。209頭がリングに登場した中、売れたのは124頭で、昨年32.8%だったバイバックレートが、40.7%に跳ね上がってしまったのだ。もっともこれとて、一昨年(05年)のこの指標が44.9%で、01年から03年の間も3年連続で今年を上回る数字を記録していたから、驚くほど高いわけではないのだが、それでも売れ残りが4割を超えるというのはマーケットとしては健康さを欠くと言わざるを得まい。また2歳セールの宿命とは言え、欠場馬が多いのも相変わらずで、カタログに記載された298頭のほぼ3割にあたる89頭が、リングには登場しなかった。すなわち、セールを通じて新たな馬主を見つけることが出来たのは、カタログに記載された馬の40%強しかいなかったわけで、売る側としてはかなり苦労した市場だったと言えそうだ。

 さて、ショッキングと言えば、総売上げや平均価格以上に大きな波紋を投げかけたのが、日本人バイヤーの動向だった。今年のこのセールにおける日本人によると見られる購買馬は、10頭。これ以外に、主取り後に直接交渉によって売買が成立した馬が1頭確認されているが、昨年のこのセールの日本人購買が21頭(その後1頭キャンセルで、日本に入ってきたのは20頭)だったのに比べると、一気に半減となった。このマーケットに日本人が足を運ぶようになったのは90年代の半ばからだが、今年よりも日本人購買が少なかった年を探そうとすると、なんと1993年まで遡らなければならないのである。

 2月21日付けのこのコラムで結果報告を行った、OBSフェブラリーセールでも日本人購買はゼロだったことを鑑みると、日本人バイヤーの急速にして大幅な市場離れが起きていると見て間違いなさそうだ。これが、単なる一過性のものなのか、北米2歳トレーニング市場に嫌気がさした結果なのか、あるいは外国産馬全体に対する興味が失せてしまったのかは、今後の市場の動向を今しばらく見てから判断したいところである。

 一方、頭数こそ少なかったが、日本人購買馬の質は大変に素晴らしいものであった。70万ドルで購買された父スカイメサ・母セイリングオンの牡馬、15万ドルで購買された父ヴィンディケーション・母リーガリーアピーリングの牝馬、同じく15万ドルで購買された父キャットシーフ・母セダクティヴリーエレガントの牡馬、33万ドルで購買された父マインシャフト・母トモロウズエンプレスの牡馬、20万ドルで購買された父チェロキーラン・母ウェスタンサイドの牡馬など、それぞれ能力が高い上に日本の競馬にも向きそうで、デビューがおおいに楽しみな馬たちである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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