4月14日(土曜日)にケンタッキー州のキーンランド競馬場で行われたG1ブルーグラスSと、アーカンソー州のオークローンパーク競馬場で行われたG2アーカンソーダービーをもって、5月5日にチャーチルダウンズ競馬場で行われるケンタッキーダービーの主な前哨戦が終了した。
私は、昨年の2歳チャンピオンで、ケンタッキーダービーでも主役を務める公算が濃厚なストリートセンスが出走したブルーグラスSを見に、キーンランドに出向いていたのだが、レースのインパクトはサイマルキャストで見たアーカンソーダービーの方が、遥かに強烈だった。
アーカンソーダービーを制したのは、圧倒的1番人気に推されていたカーリン(父スマートストライク)。2着ストームインメイに、レース史上最多となる10馬身半の差をつける完勝だった。
昨年9月にケンタッキーで行われたキーンランド・セプテンバーセールで、5万7千ドル、日本円にして680万円ほどという、ごくごく目立たぬ価格で購買されたカーリン。出走態勢が整ったのは年が明けてからで、2月3日にガルフストリームパークで行われた距離7Fのメイドンでようやくデビューの時を迎えた。
この馬の運命が大きく変わったのは、この日から。カーリンは、デビュー戦を12.3/4馬身差で圧勝。このレース振りを目にした複数の馬主が、所有者であるミッドナイト・クライ・ステーブルにトレードの申し入れを行う事態となり、結局、サティッシュ・サナン氏のパドゥア・ステーブル、ジェス・ジャクソン氏のストーンストリート・ステーブルら複数の有力者がシンジケートを組み、なんと推定350万ドル(約4億2千万円)という超高値でのトレードが成立して、カーリンは新たな組織の所有馬となったのである。
次走、3月17日にオークローンパークで行われたG3レベルSに出て、ここも5.1/4馬身差で制したカーリン。ケンタッキーダービーへの最終プレップとして臨んだのがアーカンソーダービーで、ここも無事通過して無敗で本番に挑むことになった。
キャリアわずか3戦のカーリン。デビュー4戦目でのケンタッキーダービー制覇がなれば、1915年のリグレット以来92年振り。2歳時に競馬をしていない馬のケンタッキーダービー制覇となると、1882年のアポロ以来125年振りという、どんでもない記録がかかることになったのだ。
一方のブルーグラスSは、ドミニカン(父エルコリドール)が制して、重賞初制覇をG1で達成。人気のストリートセンスはハナ差の2着だった。ブルーグラスSは前半が超スローで上がりだけの競馬となり、ストリートセンスは決して実力負けではないというのが、現地の評判だった。
そのストリートセンスも、「2歳チャンピオンは勝てない」というジンクスに挑むケンタッキーダービー。ストリートセンスが勝つにしろカーリンが勝つにしろ、歴史に残るレースとなりそうだ。