タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール結果報告
4月18日・19日の両日、英国ニューマーケットで開催された欧州最高の2歳セール「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール」は、総売り上げが前年比18.1%ダウンの879万5000ギニー、平均価格が前年比0.3%アップの73,292ギニー、中間価格が前年比10%アップの55,000ギニー、バイバックレートが36.8%(前年16.0%)という結果に終わった。
この市況は、今季ここまで北米で展開されてきた2歳セールと、驚くほど似通った傾向を示している。すなわち、平均価格は前年とほぼ同レベルだったのに対し、中間価格は前年よりも大きく上昇。ただしバイバックも著しく増えて、総売上げは前年割れというマーケットが、欧州における競馬と生産の中心地ニューマーケットでも展開されたのだ。
この市況を具体的に述べるなら、高い価格帯におけるドンパチが少なかったのに対して、中間以下の価格帯における値動きは堅調。ただし、買い手側が市場に投下するべく用意した実弾の総数は、売り手側の予測を下回っており、市場全体を支えるには至らなかったということだ。上の価格帯で言えば、このセールとしては初めてシェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏が臨場し、セール2番目の高額馬を落としたのをはじめ活発な購買を見せたのだが、それにも関わらず派手な空中戦はほとんど展開されず、前年は62万5000ギニーだった市場最高価格が今年は37万ギニーに落ち着いている。ちなみにその市場最高価格馬は、G1モルニー賞2着馬レイマンの半妹にあたる父クワイエットアメリカの牝馬で、購買したのは代理人のジル・リチャードソン氏だった。
この市場だけのことを言えば、昨年のセールがそれまでの水準を遥かに凌駕する記録的大盛況で、産業構造全体の近況を鑑みれば、今年の指標が多少縮小しても驚くには値しないことではあった。実際に今年の数字は、総売り上げがセール歴代第2位で、平均価格と中間価格はセール新記録だったから、決して悪い数字ではないのである。
ただし、昨年の好況を受けて市場関係者の事前の期待が極めて大きく、なおかつ、今年の上場馬の品揃えは過去最高と言われていただけに、セール終了後の市場関係者からは落胆の声が多く聞こえたのだった。殊に、昨年の1歳馬市場でこれまでにないほど大きな投資を行ってピンフックを行っていたコンサイナーたちからは、悲鳴にも似た声が漏れてきたのである。セールのバイバックレート36.6%は、同じ週に米国ケンタッキーで行われた「キーンランド・エイプリルセール」における47%という、超劣悪な数字に比べれば御の字なのだが、ニューマーケットの市場は2歳セールに限らず、押し並べて売れ残りが少ないことで知られているだけに、関係者の受けたは少なからぬものがあった。
さてそんな中、日本人購買者の動向はと言えば、こちらもここまでの北米におけるセールの傾向をそのまま踏襲する結果となった。つまりは、非常におとなしかったわけで、購買馬はセールスリングにおける3頭に、主取り後の直接交渉における1頭を加えた4頭と、前年の11頭を大きく下回ることになった。ただし、その4頭の水準は非常に高い。殊に、主取り後に購買されたビクトリーテツニーの半弟(上場番号7番、父イルーシヴクオリティ)や、公開調教における動きが抜群だった父スウェインの牡馬(上場番号195番)らは、大きな仕事をしてくれる可能性を秘めていると見て間違いなさそうである。