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英国ダービー展望

  • 2007年05月22日(火) 23時50分
 6月2日にエプソムで行われる英国ダービーへ向けた前哨戦がほぼ終了し、勢力分布が固まった。

 今年の英国ダービーのポイントは「フランキー・デトーリ、悲願のダービー初制覇なるか」。これに尽きるかもしれない。

 栄光に満ちあふれた騎手生活を送ってきたフランキーだが、英国ダービーは未勝利。「引退するまでには、どうしても獲りたいタイトル」と本人も公言して憚らないダービーにおける、今年の騎乗馬は、1番人気が予想されるオーソライズド(父モンジュー)である。2歳時に8FのG1レーシングポストトロフィーに優勝。今季緒戦となった5月17日のG2ダンテS(ヨーク、10F88Y)も楽勝した馬だ。

 レーシングポストトロフィーの時も、ダンテSの時も、鞍上はフランキーだったが、オーソライズドの管理調教師はピーター・チャップルハイアムで、馬主はサラー・アル・ホメイジ氏とイマド・アル・サガー氏の両名だ。すなわち、フランキーが優先騎乗契約を結んでいる、ゴドルフィンの所属馬ではないのである。

 今年の英国ダービーは、5月18日のエントリー・ステージを終えた段階で22頭が登録している。ここには、5月5日に行われた準重賞のニューマーケットS(10F)で3着となったイースタンアンセムを含めて、ゴドルフィン所属馬が3頭含まれており、契約を遵守するならば、フランキーはこのいずれかに騎乗しなくてはならない。だが、ここで太っ腹なところを見せたのが、ゴドルフィンの総帥シェイク・モハメドだった。仮にゴドルフィン所属馬が出走していたとしても、今年のダービーでオーソライズドに騎乗することを許可したのである。

 今年のゴドルフィン所属馬に、ダービー制覇のチャンスがほとんど無いことは、もはや明白である。それならば、わが子同然に可愛がってきたフランキーに巡ってきた、ダービー制覇への大きなチャンスを、邪魔立てするのはやめようという、温情裁定を下したのだ。

 このニュースが伝わったのが、先週の金曜日のことで、以降、ブックメーカーの前売りでも、オーソライズドへの買いが集中。普段は競馬を見ない人も馬券を買うダービーだけに、競馬ファン以外に名前の知られている人気者のフランキーが乗るオーソライズドは、当日になれば2倍を切る大本命になる可能性も囁かれている。

 2番手以下は、混戦模様だ。4月28日にサンダウンで行われたクラシックトライアルS(G3、10F)の勝ち馬レジーム(父ゴーラン)、5月5日にニューマーケットで行われたニューマーケットS(LR、10F)の勝ち馬サルフォードミル(父パントルセレブル)、5月10日にチェスターで行われたチェスターヴァーズ(G3、12F66Y)の勝ち馬ソルジャーオヴフォーチュン、5月11日にチェスターで行われたディーS(G3、10F75Y)の勝ち馬アドミラルオヴザフリート(父デインヒル)、5月12日にリングフィールドで行われた英ダービートライアルS(G3、11F106Y)の勝ち馬アカリーム(父シンダー)、5月13日にレパーズタウンで行われた愛ダービートライアルS(G2、10F)の勝ち馬アルキペンコ(父キングマンボ)など、前哨戦の勝ち馬たちが9倍から17倍のオッズにひしめき合っている状態だ。

 ダービー史上初のフライング・ディスマウントが実現したら、これを見逃すわけにはいかない。競馬ファンにとって、必見の英国ダービーと言えそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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