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英国オークス展望

  • 2007年05月29日(火) 23時50分
 先週のダービーに続いて、今週は6月1日(金曜日)にエプソムで行われる英国オークスの展望をお届けしたい。今年のオークスの見どころは、「ヘンリー・セシル、7年振りの英国3歳クラシック制覇なるか」。

 ヘンリー・セシルと言えば、70年代後半から90年代終盤にかけての英国で、自他ともに認める「ナンバーワン調教師」の座にあった男である。リーディングの座に就くこと9回。英国ダービー4勝、英国オークス6勝など、燦然と輝く実績を築いた名伯楽であった。

 「であった」と過去形になったのは、今世紀になってからのセシルが、かつての栄華が嘘のように凋落していたからである。00年にビートホロウで制したパリ大賞典を最後にG1制覇がピタリと絶え、01年にはリーディングのトップ10から脱落。落ちれば落ちるほど弾みがつくのが下り坂で、05年にはリーディング97位まで、成績を下降させたのであった。

 これだけ急降下だから、これを導いた理由も単純なものではなく、様々な背景が衰退を生んだのだが、つまりは公私ともに悪いことが続き、公私の切り換えがきっちりと出来るほど器用な人間でもなく、やることなすことが裏目に出ていた時間が長く続いていたのであった。

 その名門が、ようやく退潮モードに終止符を打ち、反撃態勢に入ったのが昨年後半あたりからで、今年のオークスにセシル厩舎は2頭出し。それも、レース当該週の週半ばの段階で、1番人気と3番人気が予測される馬での参戦となったのである。

 29日(火曜日)、大手ブックメーカー各社が2.75倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、パッセージオヴタイム(父ダンシリ)だ。昨年11月にサンクルーで行われたG1クリテリウム・ド・サンクルーを制し、セシル厩舎に6年振りのG1をもたらした時、このコラムで御紹介したので、御記憶の方もおられると思う。年が明け、5月16日にヨークで行われたG3ミュージドラSで今季初登場し、ここも見事に制してオークス本命の座を不動のものにした。

 昨秋に彼女が制したクリテリウム・ド・サンクルーとは牡馬混合のG1で、しかもこの時2着に斥けたのが、今年に入ってG2ノアイユ賞とG3チェスターヴァーズを連勝し、目下ダービーで3〜4番人気に推されているソルジャーオヴフォーチュンだったことで、牝馬同士ならまず負けないだろうとの雰囲気が生まれているのである。

 一方、2頭出しとなるセシル厩舎のもう1頭が、5.5倍から7倍のオッズで3番人気に推されているライトシフト(父キングマンボ)である。2歳時から注目されていたパッセージオヴタイムと異なり、こちらは2歳時3戦してメイドンに1勝したのみ。ところが冬場に急成長したようで、今季緒戦となったニューバリーの一般戦を完勝。続いて、5月9日にチェスターで行われた準重賞チェシェアオークスも連勝して、本番に駒を進めることになった。姉に、牝馬ながらG1タタソールズGCを制したシヴァがいるという良血が、3歳春を迎えて一気に花開いたと見てよさそうである。

 ちなみに5倍から5.5倍の2番人気に推されているのが、5月6日にニューマーケットで行われた準重賞プレィティーポリーSを含めて2戦2勝のダルヴィナ(父グランドロッジ)。8倍前後のオッズで4番人気に推されているのが、5月18日にニューバリーで行われた準重賞フィリーズトライアルSを含めて2戦2勝のメジャードテンポ(父サドラーズウェルズ)である。ただし、メジャードテンポは28日(月曜日)の調教後に、いずれかの脚に軽い挫石を発症したとの情報が伝わっており、今後の経過によっては回避の可能性も囁かれている。

 いずれにせよ、ヘンリー・セシルが00年にラヴディヴァインで制した英オークス以来となる3歳クラシック制覇を果たし、名門の完全復活がなるかどうかに注目したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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