北米の3歳トリプルクラウンは、今週末にニューヨーク州ベルモントパークで行われる12FのG1ベルモントSで大団円を迎える。
その北米から、トリプルクラウン路線を牽引した2頭の大駒のブリーディングライツが、揃ってシェイク・モハメドの生産組織ダーレイに購買されたというニュースが伝わってきた。現役引退後は、ダーレイがケンタッキーに持つジョナベル・ファームで供用されることが決まったのは、ケンタッキーダービー馬ストリートセンスと、ダービー2着馬ハードスパンである。
ジョン・ターフェル氏の自家生産馬ストリートセンスは、2歳時5戦2勝。デビュー2戦目のアーリントンパークのメイドンで初勝利を挙げた後、G3アーリントン・ワシントン・フューチュリティが3着、G1ブリーダーズ・フューチュリティが3着と今ひとつの成績に終わったが、強気に挑戦したBCジュヴェナイルを10馬身差で制して、一躍スターダムにのし上がった。
今季は、緒戦のG3タンパベイダービー1着、続くG1ブルーグラスS2着と来て、5月5日のケンタッキーダービーに優勝。2冠目のG1プリークネスSでは2着に惜敗して、現在は夏以降のキャンペーンに備えて鋭気を養っている。
父は、シェイク・モハメドの自家生産馬としてG1ドバイWCやG1スティーヴンフォスターHを制したストリートクライ(その父マキャヴェリアン)。03年に種牡馬入りし、04年に生まれた初年度産駒から、ケンタッキーダービー馬が出現したことになる。
母ビーダズル(その父デキシーランドバンド)は、ジョン・ターフェル氏の自家生産馬。現役時代は22戦し4勝を挙げたが、重賞や特別には縁のない馬だった。ただし4勝のうち3勝はチャーチルダウンズで挙げたもので、チャーチルダウンズで行われたBCジュヴェナイルやケンタッキーダービーを制したストリートセンスの「コース適性」は、母から譲り受けたものと言えそうだ。ビーダズルは5歳まで走り、引退して最初の年に交配されたのがストリートクライだったから、ビーダズルもまた初子からいきなりケンタッキーダービー馬を輩出したことになる。
ビーダズルの母マジェスティックレジェンド(その父ヒズマジェスティー)の兄弟に、ラファイエットSなど重賞3勝し、現在は種牡馬として活躍しているミスターグリーリーがいる牝系。
ビーダズルは05年はイルーシヴクオリティを配合され、これをお腹に受胎した状態で05年のキーンランド・ノヴェンバーに上場され、ストリートセンスのカール・ナフツガー調教師を含む4人のシンジケートに18万ドルで購買された。更にストリートセンスが昨年のBCを勝った直後、シェイク・モハメドがビーダズルをプライヴェートで購買。ビーダズルは今年の春、父スパイツタウンの牝馬を産み、その後は言うまでもなく、ストリートクライを交配されている。
ケンタッキーダービー2着馬ハードスパンは、2歳時3戦3勝。年明け緒戦のG3ルコンテSを6.1/2馬身差で制して無敗のまま重賞初制覇を果たし、大物出現と騒がれた。次走サウスウェストSで初めての黒星を喫して評価を下げたが、ダービーへの最終プレップとして使われたG2レーンズエンドSでは再び強さを発揮して快勝。KYダービー2着、ブリークネスS3着と惜敗を続けた後、現在は今週末のベルモントSを目指して調整されている。
父は,大種牡馬ダンジグ。04年春を最後に種牡馬を引退(06年1月に死亡)した父にとって、最後から数えて2世代目の産駒の1頭となる。
母ターキッシュトライスト(その父ターコマン)は、現役時代15戦4勝。ピムリコの芝12Fの特別を勝っている他、アトランティックシティの芝のG2マッチメイカーS3着の成績がある。
ターキッシュトライストの母ダービーヴェイル(その父ロベルト)の兄弟に、74年にプリークネスSとベルモントSの2冠を制して3歳チャンピオンとなったリトルカレントがいる牝系。
ハードスパンは、05年のキーンランド・セプテンバーに上場されたが、リザーヴに届かずに48万5000ドルでバイバックとなり、その後現在の馬主であるフォックスヒルファームスに売却されて、現役生活を送っている。
ストリートセンスにしろハードスパンにしろ、能力の高さは既に折り紙付きだ。種牡馬事業の面で、ライバルのクールモアに遅れをとっていると言われてきたダーレイだが、着々と追撃態勢を整えつつあると言えそうだ。