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大久保洋吉調教師 Part8 今年もクラシックを賑わす有力馬が多数

  • 2008年02月06日(水) 17時55分
 “インターバルトレーニング”によって坂路を駆け上がり、鍛えられる大久保洋吉厩舎の所属馬たちは、オークスを制したメジロドーベルを筆頭に、毎年のようにクラシック戦線を賑わす活躍をみせる。


大久保洋吉調教師

 今年も、ここ2走こそいまひとつの結果に終わっているものの、百日草特別を勝ち、同じ舞台で行なわれる今週の共同通信杯で巻き返しを図るショウナンアクロス、同じく、すでに2勝をあげているメジロガストン、そして新馬戦を快勝し、前走のジュニアCでは2着と改めて力があるところをみせたオーロマイスターなど、楽しみな顔ぶれが揃う。

 姉に阪神JFを制したショウナンパントルを持つショウナンアクロスについて、「見た目は似ているかもしれませんが、実際は違うタイプなんですよね」という感触を口にし、「課題はゲートでしょう」と語った。

 ただ、そういう言葉が出るのも、「調教の動きからもなかなか良いスピードをみせていますし、百日草特別を(1分)47秒台の時計で勝っています。内容からも力があることはわかっているのです」と、“高い資質を秘める”一族の血の力をハッキリと手応えとして感じているからこそだろう。

 そして、クロッカスSで7着に敗れてしまったメジロガストンについては、「どのような競馬が合うのか、試行錯誤している段階です。シンザン記念では、好位からの競馬を試みたいと思ったのですが引っ掛かってしまいました。なので、今回はブリンカーをはずしてみることにします。府中1400mでどんなレースをするか。ここで落ち着いた競馬ができるようなら良いのですがね」と語っていた大久保調教師。

 レースでは、直線伸びこそ欠いたものの、指揮官の思惑通りに中段に付けてレースを進めることができたことで、指揮官はまた新たな対処法を施すはずである。

 そして、“有力クラシック候補”という呼び声が高いのがオーロマイスターだが、指揮官は、デビュー前のトレーニングの段階で手応えを感じていたようだ。

 「普段の動きも良かったですし、追い切りでの時計も出ましたのでソコソコやれそうだなという感触は持っていました。たしか人気にもなっていたようでしたよね」

 大久保師の言葉通り、1.4倍という圧倒的1番人気に支持されたデビュー戦では、上がり3Fを33.7秒で駆け抜け、噂に違わぬ素質を見せつけた。そのレースぶりは、数々の名馬を手がけた指揮官にも十分なインパクトを与えたようで、あの鋭い脚について「やはり一番の魅力でしょう」と口にしたのだった。

 「ダートで活躍したお父さんでしたが、産駒たちは“芝”でも活躍をみせていますし、この馬自身も柔軟性がありますよ」

 数々の名馬を手がけてきた指揮官の眼には、それぞれの管理馬たちのいまがハッキリと映っている。そのうえで夢とまで羨まれる“クラシック”を見据えているのだ。

 ズバリ、“クラシックに出る、いや勝つために求められるモノは何か”と尋ねると、「まずは丈夫で、順調に競馬に出走できるということでしょう」と語った。

 「やはり、ある程度早い時期から実績を作っていって、ゆったりとしたローテーションで臨んでいきたいですからね。もちろん、丈夫な馬ならば多少詰まっても克服してくれますが、それでもやはり理想は余裕のあるローテーションで向かっていけた方が良いです」

 “仕上がりのスピード”、“丈夫さ”など、それらすべてが“馬の素質”だというホースマンは多い。だが、その素質を見極め開花させるのは、他ならぬ調教師の手腕だと、指揮官の話を聞いてそう思うのであった。


大久保洋吉 (おおくぼ ようきち) 美浦所属
 1944年生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業した後、実父である大久保末吉厩舎の調教助手を経て1976年に調教師免許を取得、開業。79年、メジロファントムで東京新聞杯(GIII)を制し、初重賞制覇、96年にはメジロドーベルで挑んだ当時の阪神3歳牝馬Sを制し初GIを挙げた。昨年はユメノシルシで新潟記念(GIII)を制している。所属騎手は吉田豊、高橋智大。

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