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ファシグティプトン社、ドバイ企業の傘下に

  • 2008年04月15日(火) 23時50分
 今週も先週に引き続いて、競馬業界で起きた大きな企業買収の話題をお届けすることになった。

 今回、M&Aの標的となったのは、アメリカにおけるオークション主催会社の大手「ファシグティプトン社」だ。4月10日付けで、ドバイに本拠地を置く「シナジー・インヴェストメンツ社」の傘下に入ることが発表されたのである。

 ファシグティプトンと言えば、1898年に設立されたアメリカで最も長い歴史を誇るオークション主催会社だ。ケンタッキーで行われる7月のイヤリングセールや11月の繁殖セールに加え、毎年8月にニューヨーク州のサラトガで行われるイヤリングセールや、毎年2月もしくは3月にフロリダ州のコールダーで行われる2歳トレーニングセールの主催者として、日本の競馬関係者の間でも広くその名を知られた存在である。

 買収金額は未発表だが、ファシグティプトン社がケンタッキーやサラトガに持つ不動産を含めての買収だから、相当の額にのぼることは間違いない。

 一方で、買収はされたものの現行のスタッフは原則として全員残るので、当面はファシグティプトン社の市場運営に大きな変化はない模様だ。ただし、豊富な資金源をバックに迎えたことで、これまでになかった顧客サービスが展開されていくことが期待されている。実際に、売った側のファシグティプトン社から発表された、シナジー・インヴェストメンツ社の買収目的も、「サラブレッド流通の分野で更に上質のサービスを提供する会社を作り上げることで、競馬業界に新たな投資者の参入を促し、競馬産業全体の活性化を図ること(抜粋)」となっている。

 シナジー・インヴェストメンツ社の代表はアブドゥラ・アル・ハバイ氏で、ドバイの国王であるシェイク・モハメドと極めて近い関係にある人物とされている。今回の買収にモハメド殿下の意向がどこまで反映しているかは不明だが、シナジー側の代理人としてファシグティプトンに最初の接触を試みたのが、殿下の参謀と言われているジョン・ファーガソン氏であったことから、殿下御自身の関与も深いことが推測されている。「生産」「競馬の主催」といった側面で多額の投資を行ってきた殿下が、競馬産業全体の繁栄を促進するためには「流通」という側面にも踏み込むべきと考えたとしたら、誠に理に適った話だと思う。

 業界内の口さがない連中は早くも、「モハメド殿下の宿敵クールモアクループが、ファシグティプトン社主催の市場から撤退するのではないか」などと噂をしているが、果たしてどうなるか。ファシグティプトン社が今後どのような経営戦略を打ち出すのかに、世界の注目が集まっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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