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英国ダービー戦線に動きあり

  • 2008年04月29日(火) 23時50分
 先週英国で、6月7日のエプソムダービーへ向けた大きな動きが2つあった。1つは、昨年の2歳チャンピオンで、5月3日の2000ギニーだけでなくダービーの前売りでも本命に推されていたニューアプローチの陣営から、「ダービー回避」の表明があったことだ。

 2歳時、2つのG1を含めて5戦5勝と、抜群の成績を残したニューアプローチ。父が英愛ダービーに加えてキングジョージも制しているガリレオであることから、距離延長も大丈夫と見るファンが多かった一方、最終戦のデューハーストS(G1・7F)こそ前半から折り合う競馬を見せたものの、G1ナショナルSを含めたそれ以前のレースでは道中頭を上げて行きたがる素振りをしばしば見せており、気性的に長距離は無理なのではないかとの声も囁かれていたのがニューアプローチだった。

 プレップレースを使わずにぶっつけで臨む予定の2000ギニーまで2週間を切る段階になって、管理するジム・ボルジャー調教師が打ち出した路線は、「英2000ギニーの後は、3週間後にカラで行われる愛2000ギニーへ」。最終決定を下すのは馬主のプリンセス・ハヤと、その御亭主であるシェイク・モハメドであるとしながらも、「現時点ではエプソムのダービーに向かうことは考えていない」と発言。これを受けてブックメーカー各社はいっせいに、ダービーの前売リストからニューアプローチの名を外すことになった。

 2つめは、ニューアプローチの離脱によってダービー前売り2番人気に推されることになったカーテンコール(父サドラーズウェルズ)が、23日にノッティンガムで行われた距離10Fの一般戦で今季初出走を果たし、6馬身差の圧勝を演じたことだ。このあとは、5月13日にリングフィールドで行われるG3ダービートライアルSを叩かれ、本番へ向かうことになっている。

 昨年9月にカラで行われた8FのG2ベレスフォードSを制し、ダービー候補の1頭に名を連ねたカーテンコール。しかし、2番人気に推された次走のレイシングポストトロフィー(G1・8F)では5着に敗れ、各社33倍前後のオッズで10番人気あたりというのが、シーズンオフのアンティポストにおけるこの馬の評価だった。

 今季に向けた調教が本格化した4月上旬、主戦のジェイミー・スペンサーを背に素晴らしい調教を見せ、一気に15倍前後の3ー4番人気と評価が上がっていたカーテンコール。今季緒戦の一般戦を快勝したことで、ブックメーカー各社のオッズも8倍前後まで下げられることになった。

 筆者は4月半ばにニューマーケットのルーカ・クマーニ厩舎でこの馬を見る機会があったのだが、「意外に小さな馬だな」というのが第一印象だった。クマーニ師に話を聞くと、「サドラーズウェルズの子は華奢に見えるぐらいの子の方が走るんだ。ダービーを狙える器であることは間違いない」と、この馬への大きな期待を語ってくれた。

 クマーニ師と言えば、88年のカヤージ、98年のハイライズと既にダービー2勝。そのいずれも、ダービーは3歳3戦めで、直前のプレップはリングフィールドのダービートライアルSだったから、カーテンコールの臨戦態勢はクマーニ師にとって「ダービー必勝パターン」に則ったものなのだ。

 ちなみに現段階でのダービー1番人気は、各社5倍前後のオッズで、4月17日のG3クレイヴンSを含めて3戦3勝のトゥワイスオーヴァー(父オブザーヴァトリー)となっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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