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ピーターパンS展望

  • 2008年05月06日(火) 21時30分
 今週の土曜日、ニューヨーク州ベルモントパークで、3歳3冠のファイナルレッグ・ベルモントSへの前哨戦、G2ピーターパンS(9F)が行われる。

 ダービーには間に合わなかったものの、ベルモントSをはじめとした大きな目標をもった素質ある3歳馬が集まることで知られるピーターパンSは、今年の開催が55回目と、前哨戦とは言え伝統と格式を備えたレースである。ギャラントマン(57年)、コースタル(79年)、ダンジグコネクション(86年)、エーピーインディ(92年)といった錚々たる顔触れが、ピーターパンS優勝をベルモントS制覇のステッピングストーンとしていることからも、その存在意義の大きさがお判りいただけよう。過去10年を繙いても、99年にピーターパンSで3着だったレモンドロップキッドがベルモントS制覇を果たしているのをはじめ、00年の2着馬アンシェイデッドがベルモントS・3着、02年の勝ち馬サンデーブレークがベルモントS・3着、06年の勝ち馬サンリヴァーがベルモントS・3着になっており、本番との結びつきは緊密と言えよう。

 山本英俊氏が所有し、藤沢和雄調教師が管理する、カジノドライヴ、スパークキャンドル、シャンパンスコールの3頭は、4月29日(火曜日)22時20分に成田を発ち、現地時間で同日23時21分にジョン・F・ケネディー空港に到着。日付けが変わった30日(水曜日)午前1時過ぎに、検疫場所となるアケダクト競馬場に入厩した。輸送は順調に行われたようで、多少の馬体減少はあったものの、各馬元気な様子だったと伝えられている。

 その後、5月1日(木曜日)午後3時に着地検疫期間が終了。午後4時過ぎにはベルモントパーク競馬場の第17号厩舎に落ち着き、2日(金曜日)の朝から早速馬場に入っての調整が行われている。

 3頭全てピーターパンを使うのか、あるいはカジノドライヴ1頭だけになるのか、現時点では定かではないが、いずれにしてもここは「どうしても使いたいレース」であると同時に、「決して結果を求められるレースではない」ことは明らかである。あくまでも目標は、6月7日のベルモントSだ。到着後間もないここは、有体に言えば本番を見すえた馬場見せであり、中でもキャリア1戦と実戦経験の極めて浅いカジノドライヴにとっては、1回でも多く競馬を経験させることに大きな意味があるはず。間違ってもここで馬が消耗するようなことがあってはならず、誤解を恐れずに言えば、勇気を持ってゆっくりと廻ってきてくれれば良いと私は思っている。

 相手関係は、比較的楽そう。当初ケンタッキーダービー除外の対象で、除外されたらここへ向かう予定だったG3サウスウェストS勝ち馬デニスオブコークは、結局ダービー出走がかなってここは不在。同じ5月10日にテキサスのローンスターパークで行われるG3ローンスターダービーと両睨みだった、G2イリノイダービー2着馬ゴールデンスパイクスも、ローンスターダービーに廻る公算が強まっている。そうなると、3月のフロリダダービーで後のケンタッキーダービー馬ビッグブラウンの3着となっているトムシート(父ストリートクライ)、母がチャンピオン牝馬ヘヴンリープライズという超良血馬で、ここへ来て2連勝とようやく素質開花の兆しを見せてきたコズミック(父エルプラド)、4月19日にピムリコで行われたプリークネスSの前哨戦フェデリコテシオSで3着だったデピューティーヴィル(父デピューティーワーロック)らが相手となりそうだ。

 産駒による3年連続ベルモントS制覇という大記録がかかった、名繁殖牝馬ベターザンオナーの子を所有したからには、そこへ挑まぬわけにいかないという、馬主・山本英俊氏によるスポーツマン精神に溢れた挑戦に、心からエールを送りたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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