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日本ダービー

  • 2008年06月02日(月) 13時00分
 NHKマイルC当時よりさらに迫力を増したディープスカイ(父アグネスタキオン)が素晴らしい爆発力を見せつけた。初勝利を記録したのが6戦目。皐月賞はパスしたというよりまだクラシックを展望する位置にはなく、毎日杯のあとはNHKマイルCに狙いを定めた。そのマイル戦が期待を上回る完勝だったことにより、「これならダービーでも……」。

 控えめな昆調教師だから、未勝利時の2歳秋にも、500万クラス時にも東京コースへ出走させているぐらいで、本当はずっと前から東京のビッグレースを思い描いていたのだが、結果としてステップは型破りの「上がり馬」の軌跡になった。

 勝ち時計の2分26秒7は最近ではかなり平凡だが、発表は良馬場でも少し時計のかかるコンディションだったこと。また、先頭馬のラップは前後半「1分13秒6=1分13秒1」。ほぼ平均ペースに近いが、3番手のスマイルジャックでさえ前の2頭とは大きく離れていたから、多くの有力馬がいた中団グループの前半1200m通過は1分15秒台の後半。みんなきわめて楽なペースでの追走。結果、レース全体のバランスとしてはウオッカの突き抜けた昨年とほとんど同じような後半の爆発力の勝負になっている。スローのマイルがもたらしたのと同じような結果になったことも、ディープスカイには大きく味方したといえる。通ったコースも時計も異なるが、ダービー2連勝の偉業を達成した四位騎手は昨年のウオッカとほとんど同じような位置取りで、同じようなスパートのタイミングだった。まだみんな完成途上の3歳馬同士の2400m。マイル戦をイメージするかのような四位騎手の展望がまたまた鮮やかに決まった。

 スマイルジャックは今回かからなかった。絶妙の位置取り。スパートを待って抜け出したのだから、ほぼ勝利を掌中に収めたかと思えたが…。残念。大外に持ち出したディープスカイの切れ味に屈してしまった。今回の追い切りを見ていて明らかに前回とはなにかが違っていた。私には、それがピーク過ぎに映った。逆だった。当日のスマイルジャックはゴムマリのようにはずんでいた。ずっと高い評価を変えてはいけない馬と考えていただけに、評価を下げてしまった多くのファンと同じように、無念。

 ブラックシェルはあと一歩で切れてしまいそうなくらい、現時点では究極の仕上げに映った。松田国英調教師の「ダービー仕立てここにあり」だろう。1角で挟まれ気味になる不利はあったが、あれはカリカリしすぎて、折り合いとバランスを崩しそうになっていた自身のテンションの異常な高さも関係している。3着に押し上げたのは、それこそさすが。決して第二のフサイチホウオーにはならなかった。

 マイネルチャールズは、あくまで見る側からの視点にすぎないかもしれないが、結果は陣営の作戦(読み)に失敗した部分も大きいだろう。皐月賞とまったく同じ。脚を余してはいないから100点の競馬はできた。でも、100点のレースでダービーが勝てるなら誰だっていつでも勝てる。プラスにプラスが重なり150点のレース内容が爆発しないとダービーの幸運は微笑まない。マイネルチャールズは肉を切らせて、のもっと果敢な挑戦者になりたかった。せめてスマイルジャックぐらいの位置から自分で動くべきだったろう。また、来年に夢は持ち越された。

 3番人気に支持されたサクセスブロッケンは、決してレベルの高いとはいえない皐月賞組相手なら、別路線からの挑戦は大きな可能性を思わせた。バネのあるストライド、とてもパワー型ではない体つきから好勝負と思えたが、芝うんぬんではなく3角からペースを上げて自分で進出することができなかった。立て直してもっとパワーアップし、またいつか芝に再挑戦したい。

 アドマイヤコマンドは、キャリア不足というよりレースを使い始めて4戦目。ちょうど目に見えない疲れが出る時期と重なってしまったのかもしれない。最後、苦しくなってストライドが乱れラチに接触していた。キャリアを誇ったタケミカヅチも珍しく肝心の本番で大きく崩れてしまった。あと一歩、あと一歩の惜敗で休みなしのローテーションがここへきて応えてしまったのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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