NHKマイルC制覇のパンジャタワー タワーオブロンドン産駒初の芝マイルでの勝利がGIの大舞台に
血統で振り返るNHKマイルC
【Pick Up】パンジャタワー:1着
現3歳が初年度産駒の新種牡馬は、今年の春、エンブロイダリー(桜花賞/父アドマイヤマーズ)、パンジャタワー(NHKマイルC/父タワーオブロンドン)と2頭がGI馬を出しました。
父タワーオブロンドンは、ミスタープロスペクター系のレイヴンズパスを父に持つ持込馬(外国で種付けされて日本で生まれた馬)で、4代母マーガレセンにさかのぼるファミリーは世界屈指の名牝系です。現役時代にスプリンターズSを制覇したほか、セントウルSと京王杯スプリングCでコースレコードを樹立。後者で樹立した1分19秒4という東京芝1400mのレコードタイムは、先日、トウシンマカオに破られるまで6年間も生き続けました。サンデーサイレンスともキングカメハメハとも無縁なので、ほぼどんな繁殖牝馬とも交配できるメリットがあります。
母クラークスデールは不出走馬ですが、ダービー馬ロジユニヴァースの4分の3妹(母が同じで父同士が親仔)で、マキャヴェリアンを3×3で持つというユニークな配合構成です。マキャヴェリアンはきわめて影響力の強い超良血馬で、ストリートクライ、ハルーワスウィート、ホワイトウォーターアフェア、ソニンクなどの父となっただけでなく、シャマーダル、ダークエンジェル、メーマス、ゾファニーといった海外の名種牡馬の母の父でもあります。同じく“マキャヴェリアン3×3”を持つ馬には、仏二冠を制して種牡馬としても大成功しているロペデヴェガがいます。
タワーオブロンドン産駒は、これまで芝では1400mまでしか勝ったことがありませんでした。マイル戦以上の芝で初めて挙げた勝ち星がGI制覇となっています。
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【Pick Up】ショウヘイ:1着
父サートゥルナーリアは現3歳が初年度産駒の新種牡馬。ショウヘイはファンダム(毎日杯)に次ぐ2頭目の重賞勝ち馬となりました。種牡馬同期のアドマイヤマーズ(エンブロイダリー)、タワーオブロンドン(パンジャタワー)、モズアスコット(ファウストラーゼン)、ナダル(メルキオル)なども重賞勝ち馬を出しており、この世代は優秀です。
サートゥルナーリアは現役時代に皐月賞、ホープフルSなどを勝ちました。兄のエピファネイア、リオンディーズがすでに種牡馬として結果を出しているので、産駒がデビューする前から生産界での評価も高かったのですが、期待にたがわぬ活躍ぶりを見せています。
母オーロトラジェはミッキークイーン(オークス、秋華賞)の半妹にあたる良血。「母の父オルフェーヴル」は連対率19.9%、1走あたりの賞金額198万円ときわめて優秀。わが国で供用された種牡馬に限定すると、2015年以降、母の父として400走以上した種牡馬のなかで、連対率は1位、1走あたりの賞金額は4位。ブルードメアサイアーとして前途洋々です。
ショウヘイは450kg台の小柄な馬体ですが、大舞台向きの底力あふれる血統構成で、ここにきて馬が良くなっているので、次走の日本ダービーでも侮れない一頭でしょう。
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【ネオユニヴァース】
サンデーサイレンスの代表産駒の一頭で、若き日のミルコ・デムーロ騎手が手綱を取り、遅生まれ(5月21日)のハンディキャップをものともせず、皐月賞と日本ダービーの二冠を制覇しました。種牡馬としてはロジユニヴァース(日本ダービー)、ヴィクトワールピサ(ドバイワールドC、皐月賞、有馬記念)、アンライバルド(皐月賞)といった芝向きの大物を出す一方、グレンツェント、ゴールスキー、メイショウムラクモ、アムールポエジー、ウェスタールンドといったダート巧者も出しています。現時点の通算成績は芝409勝、ダート488勝と、わずかにダートが上回っています。
母の父としてはダート向きの傾向が強いものの成績は良好で、芝向きのアエロリット、ダート向きのルヴァンスレーヴ、デルマソトガケなどを出しています。現時点で芝152勝、ダート246勝。エピファネイア、モーリス、ロードカナロアといった種牡馬と相性が良好です。
オーストラリアで孫のブレイブスマッシュが種牡馬となり、すでにGI馬キモチを出しています。ヴィクトワールピサは現在トルコへ渡って供用中。日本に残した牝馬クラークスデールはNHKマイルCを勝ったパンジャタワーを産みました。
母ポインテッドパスは非主流のヨーロッパ血統で構成されています。現代の日本血統のなかでは貴重な要素です。したがって、母方に入ったネオユニヴァースの血は、今後も長期にわたって優れた影響を与え続けるでしょう。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「アメリカの歴代ナンバーワン種牡馬は? 」
単純にリーディングサイアーの回数で比較すれば、19世紀のレキシントン(1850年生)でしょう。同国で16回首位種牡馬の座についています。第1回エプソムダービー馬ダイオメド(1777年生)の直系子孫で、1861年から74年までの14年連続と、76、78年の2回を足した計16回です。これだけ偉大な種牡馬だったにもかかわらず、父系としては徐々に勢いを失い、20世紀末に絶滅しました。
ただ、アメリカ史上最もポテンシャルが高かったともいわれる名種牡馬ドミノ(1891年生)は、父系こそ受け継がなかったものの、レキシントン3×4・4というインブリードを持ち、多大な影響を受けています。同馬はわずか2年間の供用で20頭の産駒しか残しませんでしたが、英オークス馬キャップアンドベルズやベルモントS優勝馬コマンドを含めて8頭がステークスウィナーとなりました。
20世紀以降ではボールドルーラー(1954年生)の8回が最高記録。現役種牡馬のイントゥミスチーフ(2005年生)が6回でそれを追っています。ボールドルーラーは米三冠レースの勝ち馬を1頭しか出せませんでしたが、イントゥミスチーフは今年の優勝馬ソヴリンティを含めてケンタッキーダービー馬を3頭出しています。ただ、ボールドルーラーが出した1頭は、アメリカ競馬史上最強馬ともいわれる三冠馬セクレタリアトです。