
ピューロマジック(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
6番人気以下の馬がほとんど馬券に絡んでいない
AIマスターM(以下、M) 先週はスプリンターズSが行われ、単勝オッズ24.5倍(9番人気)のピューロマジックが優勝を果たしました。
伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。大外枠だったうえ、スタート自体もそれほど速くなかったのですが、内の各馬を牽制しながら加速し、そのままスムーズにハナへ。3コーナーから4コーナーで2番手のフリッカージャブ(12着)を引き離し、3馬身から4馬身ほどの差をつけてゴール前の直線に入っています。残り200m地点を過ぎたところでサウンドモリアーナ(3着)とワールズエンド(2着)がフリッカージャブをかわし、そこから併せ馬の形でピューロマジックとの差を詰めにかかったものの、最後の最後まで逆転を許さず、クビ差のリードを保って入線しました。前走のセントウルS(2着)に引き続き手綱を取った岩田望来騎手が、大一番でこの馬の持ち味を最大限に引き出した形。実績ある逃げ馬にこんな競馬をされてしまったら、他の馬はなす術がありません。
M ピューロマジックは通算22戦目で待望のGI初制覇。これまでにスプリンターズSを2回、高松宮記念を1回、国外のG1競走を2回使っていたものの、2025年アルクオーツスプリントの5着が最高着順だった馬です。
伊吹 もっとも、重賞では前走までに通算5勝をマークしていましたし、そもそも今夏のサマースプリントシリーズ王者でもあるわけですから、私と同じく「さすがにこのオッズは舐められ過ぎだろう」と思っていた方は少なくないでしょう。まぁ、「とはいえ函館スプリントS(1着)→アイビスSD(1着)→セントウルSと使ったらもう余力は残っていないはず」という印象もあり、結局私は無印にしてしまいましたが……。同じ年にサマースプリントシリーズとスプリンターズSの両方で優勝を果たしたのは、2019年のタワーオブロンドン以来7年ぶり、かつ史上2頭目の快挙。各レースの本賞金とサマーシリーズの褒賞金だけでもここ3か月ちょっとの間に3億円以上を稼ぎ出した計算で、一連のパフォーマンスやそれを実現させた陣営の手腕は本当に素晴らしかったと思います。
M 今後は香港スプリントへの参戦やその後の繁殖入りが検討されている模様。オーナーサイドから「カーインライジングに800メートルだけは勝ちたい(笑)」というコメントも出ていましたし、対決が実現したら面白そうですね。
伊吹 ピューロマジックの脚質を考えればかなり夢のある話。相当に難しいのは当然承知していますけど、先着できる可能性がまったくないとまでは思いません。もちろん、この牝馬がどんな仔を競馬場へ送り出してくれるのかも非常に楽しみ。突出した個性であるスピードやタフネスが上手く後世に伝わってくれることを祈っています。
M 今週の日曜東京メインレースは、さまざまな路線のトップホースが一堂に会する名物重賞、毎日王冠。昨年は単勝オッズ7.7倍(5番人気)のレーベンスティールが優勝を果たしました。ちなみに、その2025年は単勝オッズ4.3倍(2番人気)のホウオウビスケッツが2着、単勝オッズ2.4倍(1番人気)のサトノシャイニングが3着という結果で、3連単の配当は1万3250円どまり。堅く収まりがちというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
伊吹 実際、過去10年の毎日王冠における3連単の配当は、平均値が1万5833円、中央値が1万1545円。なお、2018年以降の過去8年に限ると、平均値は8668円、中央値は9430円です。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、1番人気馬は3着内率が9割。一方、7番人気以下の馬はほとんど馬券に絡めていません。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気から単勝5番人気の馬は2016年以降[2-3-5-10](3着内率50.0%)、単勝6番人気以下の馬は2016年以降[0-0-2-66](3着内率2.9%)でした。人気薄の馬が波乱を演出する可能性はかなり低いと見るべきでしょう。
M そんな毎日王冠でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サトノシャイニングです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良いところを挙げてきましたね。おそらく今回も、上位人気グループの一角を占めることになりそう。
M サトノシャイニングはキャリア7戦の4歳馬。3歳時にきさらぎ賞を勝ったほか、皐月賞で5着に、日本ダービーで4着に健闘しています。前走の中京記念は3着どまりだったものの、当時は10か月以上の休養明け。上積みに期待している方は多いはずですし、1番人気か、それに近い支持が集まるかもしれません。
伊吹 先程も触れていた通り、昨年の毎日王冠は3着どまりでしたが、優勝馬レーベンスティールとのタイム差はわずか0.2秒。古馬重賞初挑戦だったことを考えれば及第点の内容と言えるでしょう。Aiエスケープが有力と見ているのならば、今回も無理に嫌う必要はなさそう。この見解を踏まえたうえで、私はレースの傾向からサトノシャイニングの信頼度を見積もっていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?
伊吹 毎日王冠はキャリアが浅い馬を重視したい一戦。2018年以降の3着以内馬24頭中23頭は、出走数が16戦以内でした。
M なるほど。キャリア17戦以上の馬は強調できませんね。
伊吹 出走数が17戦以上だったにもかかわらず3着以内となったのは、2020年2着のダイワキャグニーのみ。今年の該当馬も疑ってかかるべきでしょう。
M 先程も紹介しましたが、サトノシャイニングはキャリア7戦。この点は強調材料のひとつと見て良さそうです。
伊吹 あとは臨戦過程も素直に評価したいところ。同じく2018年以降の3着以内馬24頭中23頭は、前走の条件が重賞、かつ前走の出走頭数が14頭以上でした。
M 重賞以外のレースや少頭数のレースをステップに臨んだ馬は苦戦していますね。
伊吹 前走が14頭立て以上の重賞でなかったにもかかわらず3着以内となったのは、2022年2着のジャスティンカフェだけ。今年も一部の出走予定馬がこの条件に引っ掛かっているので、しっかりチェックしておきましょう。
M サトノシャイニングは前走が16頭立ての中京記念。臨戦過程に不安はありません。
伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬24頭中21頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.6秒以内でした。
M 前走好走馬が優勢、と。
伊吹 ちなみに、前走のコースが国内、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.7秒以上だった馬のうち、“同年の、JRAの、1800m超の、GIのレース”において9着以内となった経験がない馬は2018年以降[0-0-0-35](3着内率0.0%)。年明け以降に2000m以上のビッグレースで善戦しているような馬でない限り、大敗直後の馬は過信禁物です。
M サトノシャイニングは前走の着順こそ3着ですが、前走の1位入線馬とのタイム差は0.2秒。レースの傾向からも強調できる一頭と言えるのではないでしょうか。
伊吹 私も素直に重いシルシを打つつもりでした。他ならぬAiエスケープが太鼓判を押しているのであれば心強い限り。今回紹介した条件を綺麗にクリアしている馬はそれほど多くないので、十分な利益を出せるよう、しっかり買い目を絞り込んでいきたいと思います。
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(netkeiba編集部)