
単勝オッズ5.0倍(2番人気)のスターアニスが優勝(c)netkeiba
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
1番人気馬や2番人気馬は優秀な成績を収めている
AIマスターM(以下、M) 先週は阪神JFが行われ、単勝オッズ5.0倍(2番人気)のスターアニスが優勝を果たしました。
伊吹 完勝と言って良いのではないでしょうか。ゲートを出る際に少々ヨレてしまったとはいえ、スタート直後からダッシュ良く飛び出したのですが、先行争いには加わらず、行きたい馬を先に行かせる形で中団のポジションを確保。3コーナーから4コーナーでスムーズに馬群の外めへと持ち出し、先行した各馬の直後、かつすぐ外という絶好の位置取りでゴール前の直線に入っています。隣にいたタイセイボーグ(3着)が抜け出しを図る中、残り200m地点の手前でこれを捕らえ、そのまま単独先頭に。結局、内を突いて伸びてきたギャラボーグ(2着)に対しても1馬身1/4のリードを保ったまま入線しました。一分の隙もなく完璧にエスコートした松山弘平騎手はもちろん、力強い走りで鞍上や陣営の期待に応えたスターアニスも本当にお見事。こんなパフォーマンスをされてしまったら、他の馬はなす術がありませんよね。
M スターアニスはこれが通算2勝目。デビュー戦で5着に、前走の中京2歳Sで2着に敗れていたものの、大一番のここで勝負強さを見せた形です。
伊吹 中京2歳Sは牡馬相手の重賞ですし、デビュー戦は出遅れや前残りの展開が結果に大きく影響してしまった印象。私が思っていた通り、このあたりを不安視する必要はまったくなかったのでしょう。母のエピセアロームは、現役時代に小倉2歳Sと翌年のセントウルSを制している実績馬。本馬の半兄にあたるバルサムノートも3歳春にオープン特別の白百合Sを勝っています。ポテンシャルや早熟性の高さは証明済みだったわけで、単勝支持率がアランカール(5着)の半分くらいにとどまっていたここは絶好の狙い目だったのかも。今回と同じ阪神芝1600m外で施行される桜花賞はもちろん、その後の短距離戦線においても目が離せません。
M ちなみに、このスターアニスは前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していた馬です。
伊吹 素晴らしい見立てでしたね。私が紹介したレースの傾向からもこれといった不安要素の見当たらない馬でしたから、結果を出してくれてホッとしています。マイルCSのジャンタルマンタル(1着)、菊花賞のエリキング(2着)、秋華賞のパラディレーヌ(3着)がそれぞれ好走を果たしているように、超大穴を狙ったレースや該当馬が直前に回避してしまったケースを除くと、今秋のJRAGIは当コラムでピックアップした馬がかなり堅実。残りのレースも期待して良いのではないでしょうか。
M 今週の日曜阪神メインレースは、阪神JFと同じ舞台で施行される牡牝混合のGI、朝日杯FS。昨年は単勝オッズ9.1倍(5番人気)のアドマイヤズームが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ3.7倍(2番人気)のミュージアムマイルが2着に、単勝オッズ45.8倍(9番人気)のランスオブカオスが3着に食い込み、3連単8万6430円の決着となっています。
伊吹 過去10年の朝日杯FSにおける3連単の配当を振り返ってみると、平均値は5万6794円、中央値は4万7677円。伏兵が台頭した年もあるとはいえ、2021〜2023年の3回がいずれも2万円未満だったように、堅く収まった年も少なくありません。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、1番人気馬は3着内率が8割。昨年の該当馬アルテヴェローチェは5着に敗れてしまいましたが、基本的に堅実です。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2015年以降[6-6-3-5](3着内率75.0%)、単勝3番人気から単勝9番人気の馬は2015年以降[4-4-4-58](3着内率17.1%)、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[0-0-3-69](3着内率4.2%)となっていました。人気の中心だった馬があまり崩れていない点は頭に入れておくべきでしょう。
M そんな朝日杯FSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、リアライズシリウスです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良いところを挙げてきましたね。今回のメンバー構成なら、かなりの支持が集まりそう。
M リアライズシリウスはキャリア2戦。デビュー戦と前走の新潟2歳Sを連勝しています。新潟2歳Sで負かした馬たちが後のレースで活躍していますし、単勝1番人気の立場で臨むことになるかもしれません。
伊吹 ファンタジーSの優勝馬フェスティバルヒル、先週の阪神JFで3着となったタイセイボーグを4馬身も突き放したわけですから、新潟2歳Sの勝ちっぷりは高く評価して良さそう。Aiエスケープも、無理に逆らう必要はないと判断したようですね。この見解を踏まえたうえで、私はレースの傾向からリアライズシリウスの信頼度を見積もっていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりでしょう?
伊吹 京都芝1600m外で施行された2024年を含め、近年の朝日杯FSは圧倒的に内枠有利。2018年以降の3着以内馬21頭中17頭は1枠から4枠の馬でした。
M なるほど。今年も枠順が明暗を分けそうですね。
伊吹 ただし、枠番が5枠から8枠、かつ前走の馬体重が500kg以上だった馬は2018年以降[1-1-0-4](3着内率33.3%)。大型馬は枠順を問わずコンスタントに好走を果たしています。馬格もセットでチェックしておいた方が良いかもしれません。
M リアライズシリウスは前走の馬体重が518kg。たとえ外寄りの枠に入ったとしても、評価を下げる必要はないでしょう。
伊吹 あとは出走数も見逃せないファクターのひとつ。同じく2018年以降の3着以内馬21頭中15頭は、キャリア2戦以内でした。
M キャリア3戦以上の馬は割り引きが必要ですね。
伊吹 ちなみに、出走数が3戦以上、かつ“JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験がない馬は2018年以降[1-1-0-60](3着内率3.2%)。京王杯2歳Sやデイリー杯2歳Sを勝っている馬でない限り、キャリア3戦以上の馬は強調できません。
M こちらもキャリア2戦のリアライズシリウスにとっては心強い傾向と言えます。
伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬21頭中20頭は、同年10月以降のレースで“着順が1着、かつ上がり3ハロンタイム順位が2位以内”となった経験のある馬でした。
M 秋になってからの戦績や脚質が重要、ということでしょうか。
伊吹 おっしゃる通り。9月以前のレースしか勝っていない馬や、先行力の高さを活かす競馬で勝ち上がってきた馬は過信禁物です。
M リアライズシリウスの前走、新潟2歳Sは8月24日に施行されたレース。残念ながらこの条件はクリアできていません。
伊吹 正直なところ、私は他の馬を中心とした買い目で勝負するつもりでした。休養明けを苦にするタイプではないと思いますが、やはり夏場のレースから直行してきた点は少々気掛かり。人気が集まってしまうようであれば扱いに注意するべきでしょう。ただし、これまでの2戦が素晴らしい内容だったのもまた事実。好調なAiエスケープが有力と見ているわけですし、他馬の枠順なども考慮したうえで最終的な評価を下したいと思います。