■前回まで
新冠の武田牧場で生まれ、大井の伊藤正美厩舎に入厩したハイセイコーは、3歳だった1972年7月のデビュー戦から11月の青雲賞まで無傷の6連勝を遂げる。そのすべてが圧勝だった。4歳になった1973年、中央にトレードされることが決まった。(馬齢は旧馬齢)
競馬好きの作家で、「馬家(バカ)」を自称する石川喬司は、ゴールドイーグルに10馬身差をつけてレコード勝ちしたゴールドジュニアーを見てハイセイコーに惚れ込んだ。これがデビュー4戦目だった。
ゴールドイーグルは古馬になってから中央に移籍し、大阪杯やマイラーズCなどを勝つ強豪だ。
石川は、つづく5戦目の白菊特別を、競馬評論家の大川慶次郎とともに観戦した。
「元返しでしょうが、ここに来た証拠として単勝馬券を買いましょう」という石川の提案に大川が乗った。
「いいね。じゃあ、記念にそれにサインをして交換しよう」
ハイセイコーが7馬身差で勝利をおさめ、それらは当たり馬券となったのだが、もちろん、2人とも換金しなかった。
「こいつは中央に来ても絶対に活躍しますよ」
石川が興奮して口にした言葉が、やがて現実のものになろうとしていた──。
ハイセイコーは多くのメディアで取り上げられ、