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【地方競馬ネット会議室(3)】地方競馬のギモンを一挙解決! 川崎理事インタビュー・前編

  • 2018年11月14日(水) 18時01分
NAR

▲コンセプトは“地方競馬をより面白く!”『地方競馬ネット会議室』の第2弾を公開


NAR×netkeiba.comの共同企画『地方競馬ネット会議室』の第2弾を公開! 今回は川崎競馬の発展に尽力され、現在はNARの理事を務める川崎泰彦さん(※正しくはたつさき)が登場。矢野アナのインタビューを通じて、今までわかっているようでわかっていなかったNARの役割やクラス分けに関するギモンなどを解決していただくとともに、前回から当企画で読者の皆様に募っている“地方競馬をより面白く!”するためのアイデアについても言及!(取材:矢野吉彦)

主催者ではないNAR、そもそも役割って何?


矢野 まずは自己紹介をお願いします。私は、川崎理事が川崎競馬場にいらっしゃった時から存じ上げていました。“川崎の川崎さん”ということで…。

川崎 ありがとうございます。もともとは神奈川県の職員で、若い頃に川崎競馬場で総務課長と企画課長を務め、いったん県庁に戻り、その後、競馬場の副管理者(現場の責任者)として2年間、従事しました。当時は地方競馬の売り上げが一番低迷していた頃ですが、そんな中でJBC競走も開催しました(2012年)。

矢野 川崎競馬には、廃止話がずっと長くありましたね?

川崎 ええ、たびたび。累積赤字がかなり積み上がっていましたからね。でも、そのたびに、地元の方々が「川崎から競馬をなくしてはダメだ」と署名活動までされまして、それで経費削減や南関東4場との連携強化などを図って息を吹き返し、今に至っているということですね。

 私が携わったことを挙げれば、スタンド改修のほか、装鞍所などの業務エリアや商業施設の誘致、それと場外売場を浜松と甲府にほぼ同時に開設しました。他には、赴任直前に開設したウインズ川崎を軌道に乗せたことですかね。JRAとはウインズ以外にもさまざまな連携をしながら取り組んだ効果が表れ、流れが大きく変わったのかなと思います。おかげさまで、累積赤字を解消するまでになりました。

NAR

▲今は地域密着の都市型として生まれ変わった川崎競馬場(撮影:高橋正和)


矢野 NARに来られたのは、そのへんの実績を買われて、ということですか?

川崎 え〜、そこは私の口からは申し上げにくいんですけれども(笑)、“実務に通じている”という川崎での経験があったからこそ、選んでいただけたのかなと思います・・。

矢野 NARで担当してこられたのは?

川崎 赴任した当初は共同トータリーゼータシステム(TZS)など基幹システムの構築や、“競馬活性化”のために特別な財源を活用した広報やイベントのプラニングを担当してきました。

 現在は、システム業務に代えて、調教師や騎手の免許とか競走馬・馬主の登録審査、それに騎手を養成する教養センター(那須塩原市)の事務を担当しています。

矢野 協会の広報担当ということは、“イベントプランナー”ですね?

川崎 そうですね。最初に取り組んだのが競馬場への誘客策として打ち出した「旅うまチャレンジ」でした。塚田理事長の発案をもとにプロジェクトチームを立ち上げ、職員と一緒にイチからスタートさせました。今年で2年目を迎え、東京のお客様がホッカイドウ競馬や“ばんえい”を見に行ってくださったり、関西のお客様が高知競馬にいらっしゃったりと、おかげさまで手応えを感じています。

矢野 どんな手応えなんですか。

川崎 競馬場周辺の観光資源とコラボして、スタンプラリー方式で楽しんでいただくものですが、参加者には訪問した競馬場の数に応じてレアなグッズをプレゼントしています。当初は年間1,000人、3年間で3,000人を予定していましたが、予想を上回る参加者と多くの方がすでに全場を廻っていただいております。(※9月末現在 モバイル登録4,156名、スタンプ取得1,863名、全場達成35名)

矢野 広報の仕事で言うと、NARにもっとわかりやすく説明してほしいことの1つに、中央競馬と地方競馬の違いがあります。NARというのは何をするところで、地方競馬はどういう仕組みででき上がっているかという、そもそものところをご説明いただけますか?

NAR

▲「NARは何をするところかご説明いただけますか?」


川崎 NARのことを外部の方に説明するとき、そこが一番エネルギーを使うところです。いくつか事例を上げながら説明させていただきます。私が川崎競馬場の総務課長だったときに、特別区競馬組合(大井)が中心になって南関東の共同投票システム(SPAT4)の構築に携わりました。NARでも別の発売ネットワークシステムを持っていましたが、更新費用が膨大になることや法的な財源措置も得られましたので、一気に全国的なネットワークを作ろうとしたのです。

 当時、私自身は神奈川県に戻っておりましたが、後で聞いた話では、総論賛成、各論反対で一つの意見にまとめるのにかなりの手間と労力を要したようです。文字どおり産みの苦しみを味わって、第1期共同トータリゼータシステム(TZS)が完成したのです。

矢野 JRAは主催者だけどNARは主催者ではない、地方競馬の主催者はそれぞれ別々なんですよね。大井は特別区競馬組合、船橋は千葉県競馬組合といったように。

川崎 そうなんです。各競馬場は、それぞれの歴史や賞金、レース体系が違い、日程も平日中心とか土日中心とか、あるいは冬場は開催しないとか、そういう開催条件が異なるところで共同システムを開発するときに、いろいろな機能や開催日程などの話を1つにまとめようとすると、あちこちで無理が出ちゃうんです。それに、みんなの意見を取り入れようとすると大きなものになってしまい、その割に使い勝手の悪いものになってしまう。コストを抑え、頻度の高いものを優先順位の上位にするよう納得のいくまで協議を重ねています。

矢野 JRAではそんな問題は起きないはず。

川崎 そうでしょうね。以前JRAとの話し合いの中で、「地方競馬という名の付いた競馬場はどこにもないよ」と言われたことがあります。大井競馬場とか川崎競馬場という固有名称はあるけれど。それで、「あぁ、なるほどなぁ」と思いました。それまではあまり意識しないで「これが地方競馬の意見だ!」って使っていたけど、これは一体誰の意見だろう、本当にすべての主催者の思いや意思をひとつにまとめたものと言えるだろうかと。

 地方競馬は、14の主催者のそれぞれがいわゆる一国一城の主。その1つ1つがJRAと同じ主催者であり、競馬法の世界では同等です。NARはある意味それらを全国的な立場から束ねる組織で、主催者ではありませんが、まずは私どもが主催者の枠を超えて全国的な視点から1つにまとめられるよう務めることが何より大事なことかと。

矢野 各主催者の間を取り持つ“調整役”を務めているわけですね?

川崎 はい。カラーに例えれば、JRAはグリーンとかすぐにイメージできます。一方、「地方競馬のカラーって何?」と問われたとき、パッとすぐには思い浮かべられません。「それは14色ある」と言いたいところですが、それではお客様に納得していただけない部分がある。「地方の色は何かって聞いているのに、はぐらかされているようだ」と。「じゃ、混ぜたらいいじゃないか」と言うと、14色混ぜたら、汚い色になっちゃう(笑)。

矢野 確かに。

川崎 この話は、私が就任早々、塚田理事長と地方競馬の統一ロゴの議論をしていた時に理事長から示唆してもらったものなんです。だから、やっぱりこれは混ぜられない。各主催者が独立して、14の個性や独自性を生かしながらやっていかなきゃいけませんね。その上で、NARの役割というのは、14の主催者の最大公約数を選択しながら調整機能を果たしていくこと、これがNARの一番の仕事でしょう。これに尽きますね。

 それともう1つは、窓口の一本化。「この競馬場に行ったらこういうことを言ってたのに、あの競馬場に行ったら違うことを言われた」となると、どちらの言い分が正しいのか。これは良くある話で、それだけ、地方にはそれぞれのローカルルールが根付いているんです。一昔前ならいざ知らず、今は全国でお客様が地方競馬を楽しんでいただいています。とりわけ、JRAファンからすれば、地方ごとに競馬の扱いが異なるのは理解しがたい、そこはNARが各主催者の事情を汲んで意見のすり合わせを行い、出来るだけ共通化、一本化した上でお客様のご要望にお応えしていきたいと考えています。

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▲「NARの役割は、14の主催者の最大公約数を選択しながら調整機能を果たしていくこと」


“調整役”として、できること・できないこと


矢野 とにもかくにも、最終的に何をやるかを決めるのはそれぞれの主催者なんですね。“調整役”としての難しさを感じたことはありますか?

川崎 そりゃあ、もう(笑)。開催日程や発走時間の調整などは重要なテーマで、主催者にとって死活問題ですから、我々はいつもピリピリしながら丁寧に対応することを心掛けていますよ。それに、ダートグレード競走のような各競馬場の看板レースをいかに競合させないようにするのか、代案を用意し納得していただけるよう努めています。

矢野 ほかには?

川崎 例えば“ダービーシリーズ”のようなシリーズものの調整ですかね。ご存知のように、各地区にはそれぞれにダービーがあります。でも、開催時期が違う。だいたい6月頃が多いですが、11月にダービーグランプリと銘打ってやるところもありますし。春にこれを1つに束ねた“シリーズ”を作って、その最終戦に“全国ダービー”を開催しようとしますよね。JRAなら最終戦に向けて一本化した体系を組めばいいわけですが、地方ではそうスンナリとはいきません。

 各競馬場には、自分のところのダービーが終わったら、ほかはあんまり関係ないという“雰囲気”があります。第3戦とか、第6戦目とかの意識が感じられない。だから、最終戦も単なるダービーの一つでしかない。そこで、役割分担を考えなきゃいけないわけで、各主催者はそれぞれ自分のテリトリーでしっかりダービーをやっていただき、NARは全体を見渡します。ポスターにしてもPV、テレビCMにしても、初戦から最終戦にかけて全体をご覧いただくための取り組みをNARがやるわけですね。

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▲佐賀・高知のダービー二冠を達成し、「ダービーシリーズ2018」を盛り上げたスーパージェット (c)netkeiba.com


矢野 2歳戦でも古馬戦線でも、全国規模のレース体系を確立しようとすると、各主催者間を調整する必要があるんですね?

川崎 ダートグレード競走を目標に、そこへのステップレースを設けながら、その目標に向かうようにしていかないと。いくらなんでもバラバラ状態じゃ資源の無駄遣いということになりますし。せっかく出走態勢が整っても、番組体系が十分でないために、出走意欲のある馬が「出ない」「出られない」ということでは困りますので、そこはNARが調整機能を発揮しなければいけませんね。競走条件の改善や、レース体系の整備というのは常に大きな課題です。

矢野 今回の企画で、読者から「距離のバラエティが少ないので退屈に感じる」など距離体系に関する要望も多く寄せられました。

川崎 そうですね。地方競馬の場合はコースがかなり小さめですので、距離別に体系を整えようとしても、なかなかJRAのようにはできません。昔は長い距離のレースも多かったんですけど、最近はほとんど2000メートル以下で1400〜1600メートルが中心ですが、それでも4つのコーナーを回るなど、コースの特性から、どうしても距離が偏ってきちゃうんですね。お客様にとって同じような距離ばかりで飽きがこないように、クラス混合戦や対抗戦、あるいは、企画レース、例えば芦毛限定や産駒指定のレースなど、常に話題性を持っていただけるよう、各主催者とも工夫しております。

矢野 理想的なものを作り上げるのはすごく難しいが、そういったプランニングを川崎理事がご担当されていると?

川崎 実際には各主催者が取り組みますが、私たちはそうした取り組みを後押ししたり、情報を共有する場を提供してアイデアを競っていただくなどの黒子に徹しております。

 さらにお話しすると、昨年、3歳秋のチャンピオンシップということで、春のダービーシリーズのように、秋にもダービーグランプリを頂点として、そこに向かう各地の重賞競走を整理しましょうと主催者に働きかけました。スーパースプリントシリーズも新しく金沢競馬に入っていただいたり、牝馬のグランダム・ジャパンでは最終戦のポイントを上げたりと、様々なことを頑張ってやっているんですけども・・。ただ、全体としては、競馬ファンならずともスッキリ感という意味では、まだまだだと思います。そこはこれからも取り組まなければいけない大きなテーマでしょうね。

矢野 NARの一番の仕事は“各主催者間の調整”とのことですが、騎手の養成や登録免許の交付、それに、審判委員や発走委員の派遣といった公正確保に必要な業務もありますね?

川崎 はい。騎手の養成は那須にあるNAR(地方競馬教養センター)が行っています。あとは騎手、調教師の免許交付ですね。さらに、厩務員の認定自体は各主催者が行いますが、NARには認定調査というのがあって、経歴などを含め厩務員にふさわしいかどうかを、主催者からの求めに応じて調査する業務がNARにありまして、その中で協力させていただいています。それと、もちろん地方競馬の競走馬や馬主の登録も。

矢野 もう一度、広報の話に戻ると、ファンにとって身近なところにホームページがあります。「各主催者はもとより、NARもホームページを開設している。これをもっとわかりやすくしてほしい」というご意見がありますが、それについては、どのようにお考えですか?

川崎 そうしたご意見は、たぶんJRAのホームページは「一つで完結してまとまっているのに、地方はあちらこちらにある。バラバラだ。」との思いが強いんでしょうね。

矢野 おそらくそうでしょう。これも、地方競馬がNARと各主催者の二重構造になっていることの象徴だと思います。例えば、各主催者のサイトを統一した様式にした上で、NARサイトの見出しから簡単にアクセスできるようにして、各主催者のページからはNARのデータベースにすぐにつながる形にすると、わかりやすくなるかなと思うんですけど。

(⇒後編につづく)

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