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同世代の2組が紡ぐストーリー 池田康宏厩務員と谷中康範厩務員

デイリースポーツ
  • 2016年12月13日(火) 14時00分
「ほんまにかわいくて仕方がないんや。2歳の時からもう4年の付き合いやからな」。

 そう言ってスマホを取り出し、写真を見せてくれたのは、矢作芳人厩舎の池田康宏厩務員(58)だ。画面には、3日のイルミネーションジャンプSを勝った担当馬のタイセイドリーム(牡6歳)が、ウインクする愛らしい姿が写っていた。

「この馬は自分で道を切り開いたんや。芝も準オープン(1600万下)で頭打ちで。パワー型やからダートで、と思って使ったら、それもダメで…。地方に転厩とかなったらどうしようと心配していたら、障害で結果を出してくれてな」

 入障初戦こそ4着に敗れたが、2戦目で障害初勝利を挙げると、そこから3連勝で重賞の新潟ジャンプSを制覇。障害は7戦4勝、全レースで掲示板を確保するなど、安定感は抜群だ。6日に放牧に出たそうで
「中山競馬場のバンケット(上がり下がりの坂)もこなしたしな。来年の春は中山グランドジャンプJ・G1(4月15日・中山)が目標やね」と目を輝かせた。

 池田厩務員は、74年に競馬の世界に入ったこの道40年を超える大ベテラン。先日のタイセイドリームの白星が担当馬112勝目だという。「俺は昔から障害に縁があってな。初めて重賞を勝ったのも、松永善晴厩舎時代の京都大障害(84年5月5日・京都)。川村(禎彦)先生(元騎手で現調教師)が乗ったポットヒーローって馬でな」と、懐かしそうに目を細めていた。

 年齢を重ねるごとに、競馬界を去る同世代の仲間は増えていったが、今でも刺激し合える同期がいる。障害転向後8戦6勝のニホンピロバロン(牡6歳)を担当する田所秀孝厩舎の谷中康範厩務員(58)だ。池田厩務員は「同じ年に面接受けて合格した“栗東組”は、俺と谷中の2人だけなんや」と、当時を振り返っていた。

 今年の3月。2人は担当馬を伴い、中山競馬場にいた。レース前夜、競馬場近くの「酒処ミネ」で、ともにグラスを傾けた。「中山グランドジャンプを3連覇(05〜07年)したカラジのゼッケンがあったわ。スタッフが滞在中によくご飯を食べに来てたんやって。そこで谷中と“俺らもいつかここで一緒に大きなレースを走れたらいいな”と話をしたんや」と明かしてくれた。

 当時、タイセイドリームは障害転向プランこそあったが、入障前の身。それでも予感はあったのだろう。「来年春に実現できたらうれしいな」と声を弾ませた。その言葉が意味するのは無論、中山グランドジャンプ。その前に、ニホンピロバロンには中山大障害(23日・中山)が控える。「年末、谷中の馬には頑張ってほしいな」とエールを送っていた。

 それを受けた谷中厩務員は「俺の腕にかかってるな」と、言葉とは裏腹に控え目な笑顔を浮かべ「前走(京都ハイジャンプ2着)は太かったし、行きっぷりも悪かった。今度は頑張りたいね」と気を引き締めた。年末の大舞台で最高の輝きを放ち、来年はともに無事に約束の地へ-。人も馬も同世代の2組が紡ぐ物語には、どんな続きが待っているのだろうか。(デイリースポーツ・大西修平)

提供:デイリースポーツ

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