悪天候の中、第78回
菊花賞を制した
キセキはレース後、京都競馬場からは順調な道のりで午後6時半すぎには厩舎に戻った。そして、一夜明けた今朝も目立った疲労をみせることなく順調に馬房で過ごしているそうだ。
「普段どおりのたたずまいです。今朝、脚元と歩様のチェックをしたところ、さすがに筋肉の疲労は見受けられましたが、度合としては“昨日あれだけ激しい競馬をしてきたのかな?”と思わせるほどですよ」と担当の清山助手は驚きの表情をみせた。
「改めて、違う意味でビックリさせられています」
レースはスタンドからの観戦。肉眼とターフビジョンで交互に見ながら愛馬を見守った。
「ミルコが上手に走らせてくれました。すごく繊細なところがある子なので、ジョッキーも気を遣っていましたね。ああいう条件だったので、冷静かつ繊細に深く考えて乗ってくれたと思います。それから、9レースと10レースを勝っていたので、その勢いのまま
菊花賞へ向かえたのも良かったですね」
早くから陣営は
キセキの潜在能力の高さを見抜いていたが、春のクラシックはまだ力を発揮をできないと判断。あえて、自重する作戦に出た。
「春シーズンを諦めて休養をさせて成長を促すという英断をし、7月に500万の平場から秋を目指しました。まだ、成長していく過程の中で、条件をひとつひとつクリアしていかなければなりませんでしたね。そして、
神戸新聞杯では2着にきたけれど、本当にGIに通用するほど成長しているのかを不安に思いつつ、これまでの経験値から
キセキから感じるポテンシャルの高さを信じてレースに臨みました」
次走はまだ決まっていない。そして、
キセキ自身のパフォーマンスもまだ成長途上だ。
「この馬の完成はまだまだ先だと思います。現段階では何パーセントまで来たのか、という数値はつけられません。でも、そんな状況の中でこちらが思う以上に信じられないほどの結果を出してくれました。あの子の持って生まれた力と頑張りには感謝しかないですね」
(取材・写真:花岡貴子)