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鞍上の好判断で接戦を制したニシケンモノノフ/JBCスプリント回顧(斎藤修)

  • 2017年11月04日(土) 18時30分
 枠順からしてどんな展開になるのか予想するのが難しかったが、ダッシュよく飛び出したコーリンベリーがハナを獲り、内枠ゆえ包まれたくないと考えたのだろうニシケンモノノフも気合を入れて行ったが、外のネロも速く、ニシケンモノノフは3番手。コパノリッキーはダッシュがつかなかったが、それはある程度予想されていたこと。スタート後の展開は想定内といえるものだった。

 人気を確認しておくと、コパノリッキーの1番人気は意外だった。人気が拮抗していたとはいえ、馬連や3連複では人気の中心がニシケンモノノフで、馬単、3連単ではコパノリッキーが中心となっていた。

 コパノリッキーのスタートは、おそらく2000m戦であれば互角か、やや遅いという程度だっただろうが、さすがにこの距離では完全に置かれる形になった。それでも400mを過ぎた3コーナー手前あたりから、まくるように位置取りを上げていった。

 最初の3F目までのラップを見ると、12.3-10.8-11.5というもの。コパノリッキーが位置取りを上げていったのはちょうど3F目あたり。先頭から6馬身ほどもあった差を一気に詰めてきているから、おそらくコパノリッキーは3F目にも10秒台のラップを続けていることになる。芝にしろ、ダートにしろ、1200m戦の中間手前で仕掛けていくというのはあまり見たことがない。そこで脚を使ってしまえば、直線までもたないと考えるのが普通だろう。しかしコパノリッキーは違った。残り50mあたりで先頭に立ち、一旦は勝ったかに思えた。それを内から差し切ったのがニシケンモノノフだった。

 16頭立ての10番枠に入ったコパノリッキーにとって、スタートでダッシュがつかないのはむしろよかったのではなかったか。互角のスタートを切って行き脚がついてしまえば包まれてしまい、外に持ち出せなかった可能性がある。馬群から取り残されたことで、むしろ難なく外に出すことができた。

 初騎乗だった森泰斗騎手は、馬にとっても経験がない1200m戦、1分ちょっとというわずかの時間で、様々な難しい判断があったと思われる。レース後はさすがに厳しい表情で、「あそこで上がっていったのが正解だったのかどうか、わかりません」と話していた。

 果たして、それがよかったのかどうか。中団よりうしろでじっとしていて勝とうと思えば、たとえば3着のブルドッグボス、5着のキタサンミカヅキが、ともにメンバー中最速の36秒2という上りを記録しているのだが、それ以上の脚を使わなければならない。経験のない短距離戦で終いにその脚を使うのはまず無理だろう。結果、アタマ差で惜しくも2着。JBCの2階級制覇と、GI/JpnIの3階級制覇にアタマ差届かなかったコパノリッキー。クラシックではなくスプリントへの挑戦は、負けたからには成功だったとはいえないが、間違ってはいなかった。

 勝ったニシケンモノノフは、横山典弘騎手の好判断、好騎乗が光った。直線を向いて、ネロコパノリッキーの間を突こうとしたが、コパノリッキーの勢いがよくその間には進路ができず。おそらく馬場が重い内には行きたくなかったのだろう。

 横山騎手は残り200mのあたりで外を見たが、ブルドッグボス、さらにそのうしろからキタサンミカヅキも伸びてきていて外にも進路はない。選択肢として残されたのは内。幸いにも最内のコーリンベリーが下がりはじめていたので、ネロの内に進路ができた。果たして馬場が重いと言われる内でも、伸びきる余力が十分にあったということ。直線で行き場をなくしそうになり、外か、内かという判断から抜け出したということでは、着差以上に強い競馬だった。

 3着のブルドッグボス、4着のネロまでタイム差なし、そして5着のキタサンミカヅキがコンマ1秒差というきわどい決着。直線を向いて一旦は先頭に立ったネロ、4コーナー中団から追い込んだブルドッグボスキタサンミカヅキも素晴らしいレースをしたが、今回は、横山騎手の瞬時の判断による好騎乗と、コパノリッキーの短距離戦でも最後まで脚を使えるスタミナに尽きる。

 多頭数の大井1200mは、やはり枠順がかなり勝負の鍵をにぎる。それはどの枠が有利でどの枠が不利という単純なものではなく、馬の脚質による。

 内枠に入った逃げ馬はスタートさえ決まればかなりのアドバンテージがあるが、逆に外からハナをとるにはかなり脚を使ってしまう。それが今回のコーリンベリー。内枠に入ってあのダッシュ力ならもっと楽に逃げられたはずで、今回はニシケンモノノフを制してハナを取るのに脚を使ってしまった。

 対して控えるタイプの馬は、包まれることがない外枠が有利。ただ今回のコパノリッキーは、よほど内のほうの枠でなければ、あれだけ他馬から置かれてしまえば、結果的に真ん中あたりの枠でもあまり関係がなかった。チャンピオンズCでは3度とも惨敗しているコパノリッキーだが、もしかすると今回の経験は厳しい展開になりやすいチャンピオンズCに生きてくるかもしれない。ただし、やはり内枠には入らないほうがいい。

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