記者の記憶が確かなら阪神JFの翌週である。同レースを3着に終わった
マウレアの今後について、管理する
手塚貴久調教師に、せんえつを承知で直言した。
桜花賞を狙うなら
クイーンCを使わず、13年
桜花賞を制した全姉
アユサン同様、
チューリップ賞を
ステップレースに選ぶべきということ。むろんゲン担ぎではない。
クイーンCから直行で
桜花賞を制した馬は76年
テイタニヤ1頭。16年
桜花賞で断然人気(単オッズ1.5倍)だった
メジャーエンブレムでさえ、
クイーンC(5馬身差圧勝)後の本番は0秒4差4着に終わった。明確な因果関係は分からないが、こと
桜花賞に向けては“死のローテ”だと力説した。
「よく調教師に向かってそんなこと言えますねぇ。ただ、
アユサンが
桜花賞を勝てた理由は確かに、その辺にあると思うんですよね」
無礼なる当方の意言に驚きつつも、当時こう切り出したのは同キュウ舎の
矢嶋大樹助手だった。
「
アユサンの強みは阪神JFと
チューリップ賞で、関西馬に劣らないコース経験があったこと。さらに
トライアル後の栗東滞在が刺激になり、馬自身がグンと成長してくれたこと。すべていい方向に向かった末の勝利でした」
それでも今回は願いかなわず、陣営は確実な賞金加算をもくろんで
クイーンCへ。結果はまさかの5着。「レースに行って鈍感というか、のんきな面を見せてしまった」と指揮官は誤算に唇をかんだが、ある意味で
マウレアは“持っている”馬と言えようか。直行プランは白紙になり、自身2度目の阪神マイルで仕切り直し。
桜花賞出走権を取れば栗東滞在が濃厚で、当方からすれば事態は随分と好転し始めた。
「今回は暮れの阪神JF上位2頭との再戦。向こうがどれだけ強くなっているかは分からないが、こちらには1度使ったアドバンテージがあるし、刺激を与える意味でレースでメンコを外すことも考えている」(手塚師)
以前に当欄で記したように、
マウレアはデビューから力を出し切ったことのない至って“奥ゆかしい”馬だが、
桜花賞馬の妹にとって、今回はいよいよ失敗を許されない瀬戸際の舞台になる。鞍上の手替わり(
武豊)も含め、新味を期待してレースに注目したい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ