満開の桜が春の訪れを告げるのと同時に、今週の
大阪杯からいよいよ今年の芝中距離GI戦線の幕が開く。
昨年は1番人気
キタサンブラックが快勝。“1強”を年頭から力強くアピールし、年末の
有馬記念まで突っ走ったが、今年もそんな象徴的シーンが待っているかもしれない。というのもGI昇格初年度はわずか3頭だった4歳馬の挑戦が、今年はフルゲートの半数に迫る7頭へと一気に増えたからだ。
年明けから現4歳世代の快進撃が止まらない。芝の古馬中長距離重賞10鞍(牝馬限定を除く)のうち6鞍でV。クラシック戦線で脇役にすぎなかった馬たちが、ウップンを晴らすかのような飛躍を遂げている。キタサン引退後も古馬GI戦線に空き巣感がなく、フレッシュさが漂うのはそのためだろう。
新時代の幕開け..。それを感じているのは
大阪杯に4歳馬
ウインブライトを送り出す
畠山吉宏調教師も同様である。
「クラシック戦線はもろ刃の剣なんです。世代を代表する素質馬が皆栄光をつかもうと挑む厳しい戦い。その頂点を極めた馬でさえ、受けるダメージの大きさは生半可ではないですから。そこを機に成長が止まってしまう馬がどれだけ多いことか。だからこそ、今年の4歳は不思議な世代だと思うんです」
トレーナーの言葉通り、
ウインブライトも昨年のダービー・15着から大きな成長を果たした一頭だ。以前当欄で記したように、後肢の弱さを抱えた3歳春は「こんな状態でよくこれだけ走れる」と主戦・
松岡正海が舌を巻いたほどの完成度。実際、ダービー時は疲労の蓄積からガタガタ、そのまま終わっても不思議はなかったのだが…。
「夏場をしっかり充電に充てたのが良かったか、段階を踏んで実が入り、ジョッキーが“まだ成長過程”と口にする中で結果を出してこれました。“パンとすれば走るのに”と思う馬はたくさんいますが、競走生涯をそのまま終えるのも大多数ですからね。実際、これだけ着実に馬が成長していく姿を見たのは自分自身も初めての経験。秋はどうなるか、5歳にはどうなっているのか。そんな期待を持たせてくれる」
プロ野球では“松坂世代”という言葉がかつてあったが、言い換えれば現4歳はダービー馬
レイデオロを頂点に切磋琢磨できる黄金世代かもしれない。新たなラ
イバル関係の構築という意味でも、
大阪杯は見逃せない今季初の芝中距離GIとなりそうである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ