皐月賞の最終登録日となった1日、
JRAはさぞ焦ったことだろう。全てのホースマンが憧れるクラシックの舞台が「フルゲート割れ」の事態に陥ってしまったからだ。
皐月賞のフルゲートが18頭になった1990年以降、割り込んでしまったのは、これで2015年に続き2度目。この事態だけは避けたかったに違いない。実際、登録締め切り前には「
JRAは多くの調教師に
皐月賞の登録を打診していた」という話も伝わってきたほどだ。
で、本題はここから。このフルゲート割れの状況が、
ワグネリアンにとっては、とてつもなく大きなプラス材料になったとみている。
というのも友道厩舎は当初、収得賞金900万円の
ジュンヴァルロが
皐月賞に出走できない事態を想定して、
アーリントンCも視野に入れていた。が、出られないどころか、抽選もなし。この
ジュンヴァルロの参戦確定が、2頭出しの「大将格」
ワグネリアンにとっては得がたい“援軍”になるのだ。
「栗東の馬房でも
ワグネリアンと
ジュンヴァルロは隣同士。一緒に(中山競馬場へ)行けるだけでも大きい」と友道調教師の声も弾む。
前走の
弥生賞(2着)では、前日からの強風の影響で馬が相当ナーバスになり、カイバも食べなくなったという。実際、手綱を取った福永は「ゲート内でも暴れてしまって…。あんなにイレ込んだのは初めて。正直、こりゃないかもって」と惨敗を覚悟したほどだった。
新馬戦→
野路菊S→東京スポーツ杯2歳Sと無傷の快進撃を続けた素質馬でも、ちょっとしたことで能力発揮に支障が出るのが、この時期の若駒なのだ。だからこそ、普段から近くにいる“同僚”の存在の大きさは計り知れない。
「俺の馬は普段からすごくおとなしくて。近くで車とかバイクの音がうるさくても平然としているからね。
ホープフルSで中山に輸送した時も、そこは全く変わらなかった。普段から
ワグネリアンとは仲がいいし、あの馬にとって、俺の馬と一緒に行けるのは確かに大きいと思うよ」とは
ジュンヴァルロを担当する島助手の弁だ。
ワグネリアンの1週前追い切り(5日=ウッド5ハロン70.3-11.6秒)に騎乗した福永は「馬場入りの1歩目から違っていた。以前はハミをかんで、かかり気味に行くところがあったけど、今は体を使いながら、楽に持っていけるようになっている。今のところ言うことなし」と満点評価。この好気配を維持するために必要な「頼もしい同僚」
ジュンヴァルロが決戦の舞台まで寄り添ってくれる上に、一番の強敵だった
ダノンプレミアムは回避…。
前哨戦の
弥生賞では「風」に苦しめられた
ワグネリアンだが、本番を前にV確率を高める“追い風”が吹き始めている。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ