実は、
ラッキーライラックは土曜日が嫌いです。その理由は、“競馬開催という人間の都合で火曜から金曜までより調教時間が早くなるから”、なんだとか。
「人間もそうだと思うけど、急に普段より早く起こされて仕事させられたら嫌じゃないですか。土曜日はそうなることが多いし、開催によっては相当速い時間から調教を始めることになる。そういったことに対して素直に嫌がるんです。でも、
ラッキーライラックのいいところは、それが尾を引かないところ。翌日の日曜も同じ時間帯で調教することになるのですが、それに対しては嫌がらずに受け入れます」(丸内助手)
このように基本的な生活リズム、それに対する自身の納得が大事な
ラッキーライラックに対し、陣営は競走馬の生活の中で
イレギュラーの典型である長距離輸送という課題を“少し早い時間での輸送”という工夫で理解させることにしました。
「長距離輸送自体は過去、新潟(新馬戦)や東京(
アルテミスS)で経験しています。でも、あの頃はまだ馬自身が何がなんだかその意味を分かっていなかった。でも、今回は6戦目。ここ3戦は当日輸送の阪神競馬だったので“馬運車で運ばれて、到着したら競馬”というリズムになっていました。そこで今回はお昼に競馬場に到着し、そのあと引き運動をして、馬を洗ってゆっくりさせました。“今日はレースじゃないよ”というのを理解させるためです。実際、わかってくれて落ち着いていますから、これで良かったと思っています」
このように、ここ3走続いた“輸送のあとはすぐに競馬”というリズムではない、ということを
ラッキーライラック自身に理解させることができれば、もともと気持ちの切り替えも早いので落ち着いて過ごせると見込んだのです。
「結果的に、競馬に向けて気持ちが昂(たかぶ)る時間を短縮できます。それが狙いです」
陣営はかねてから“
ラッキーライラックは距離が延びてこそ、いい”と話していました。そしていま、その舞台は目の前です。
「デビュー前から先生(
松永幹夫師)と『この馬で
オークスにいけたらいいね』と話していたんです。それがこんなに人気になる馬で、しかも順調にこれて本当に良かったです」
(取材・文:花岡貴子)