2006年にハンデ戦に替わってからは、「軽量馬の激走&重量馬の不振」という図式が毎年のように続いているのがGIII
マーメイドS(10日=阪神芝内2000メートル)。これまでにトップハンデ馬で勝利を飾ったのは13年
マルセリーナ(56キロ)だけなのだから、基本的に「重い斤量を背負った馬は消し」という馬券作戦も成り立つのだが…。
一方で「本当にハンデが重いから消しなのか」との疑問を抱かせる側面もある。というのも、これまでトップハンデを背負った馬=全16頭のうち実に8頭が「
ヴィクトリアマイルからの転戦」という事実があるからだ。
ひょっとして斤量が重いからダメなのではなく、メイチ勝負のGIからさらに続戦してきたからこそ、走れなかったのではないか?そんな坂路野郎の仮説に同意してくれたのが中村調教師だ。
「やっぱりGIってのはビッシリと最高の状態に仕上げていくものだし、競馬自体も厳しいものになるから、レース後はバテやすい。GI後に凡走してしまうケースは、そういう面が影響しているんだろうな」
中村調教師が管理する
キンショーユキヒメが
福島牝馬Sを勝った直後、取材陣に次走は
ヴィクトリアマイルに向かうことをほのめかしながらも結局、使わなかった理由もここにある。
「GIに行こうかと気持ちが揺らいだのは確かだけどね。もともと阪神の2000メートルを得意にしている馬。負担のかかるGIを挟むよりは、
マーメイドS一本に絞った方がいいと思って。秋には
エリザベス女王杯に使いたいと思っている馬でもあるからね」
昨年の
マーメイドSでは9番人気という低評価ながら、メンバー最速の上がり(34秒3)を駆使して0秒1差の4着と大善戦。条件馬の身だった当時(ハンデ51キロ)に比べ、実績を積んだ今年は当然ながらハンデ55キロと背負う側になったが、GIを使わず、ここ一本に絞った熱意の調整過程を思えば…。
キンショーユキヒメは安易に評価を下げられる馬ではない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ