“マジックマン”を失ったからこそ、逆に妙味が出てくる。
「逆転の発想」で第23回
秋華賞(14日=京都芝内2000メートル)に挑むのは、「トレセン発(秘)話」でおなじみの高岡功記者だ。
京都大賞典(8日)では鞍上にこだわって失敗した男が、柔軟な予想で逆襲に転ずる――。
「モレイラはスタートが抜群にうまい」
トレセン関係者からよく聞く話だ。
「(福永)祐一さんが言っていたんですけど、モレイラはゲートの中で馬の鼻先が(ゲートの)扉につくぐらい、頭を前に押しているようです。中で
リラックスさせる日本のやり方とはちょっと違いますよね」(某調教助手)
それこそがスタートをうまく出すための“マジック”なのか?
そんなモレイラが常に出遅れがネックとなっていた
サラキアに乗って、
秋華賞でどういうスタートを決めてくれるのか、大いに楽しみにしていたのだが…。モレイラは6日、東京9Rの
本栖湖特別で騎乗した
ヘリファルテ(1位入線)が決勝線手前で内側に斜行し、2着
ブラックプラチナムの進路が狭くなったため13、14日の2日間の騎乗停止処分(降着はなし)に。これで
秋華賞の楽しみが少し減ってしまった?
一方でモレイラ騎乗で人気沸騰は確実だった
サラキアの支持率が“平常値”に戻るのを歓迎する自分もいたりする。管理する
池添学調教師がこんなことを言っていたからだ。
「前走(
ローズS2着)の
パトロールを何度も繰り返し見たんですけど、スタートはちゃんと出ているんですよ。ただ、トモがしっかりしていないから1歩目、2歩目で後ろがバラバラになって、スピードが乗らない。二の脚というよりは“三の脚”で馬群に取り付く感じなんですよね」
春に比べてゲート内で落ち着くようにはなっているのだという。つまり、今の
サラキアの“遅れ”はトモが緩い現状がもたらすもので、ひょっとすると誰が乗っても同じようなスタートにしかならないのではないか…ということなのだ。モレイラ騎乗で過剰に人気になっていたとすれば、危険とは言わないまでも、おいしくはなかったのかもしれない。
「前走後も馬体に張りがあって、いい意味でピリッとしています。いつでも使えるぐらいの雰囲気ですね。
アーモンドアイの後ろにいたら勝負にならないので、今回は少しでも積極的に行ければと思っています」(
池添学調教師)
史上5頭目の牝馬3冠を狙う超難敵を向こうに回して、真っ向勝負を挑む、このトレーナーの姿勢はつい応援したくなる。
モレイラ騎乗で過剰人気が予想されていたのであれば、モレイラが乗れなくなった反動で過小評価まであり得る? そんなことになれば、
サラキアと
アーモンドアイの表裏で思いっ切り勝負するのもひとつの手ではなかろうか。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ