牝馬三冠なるかに注目が集まる、今年の
秋華賞。
アーモンドアイ(牝3、美浦・
国枝栄厩舎)が勝利すれば史上5頭目の快挙だが、その前に達成したのが2012年の
ジェンティルドンナである。「平成」に牝馬三冠を達成した3頭を振り返る、牝馬三冠挑戦記。今回は
ジェンティルドンナを取り上げる。
■激闘の末、掴んだ史上4頭目の牝馬三冠
ジェンティルドンナの春の
ハイライトは
オークスだろう。着差は5馬身、レースレコードを1.7秒更新する圧巻の走りを見せたのだ。直線ではケタ違いの末脚を繰り出し、残り200mで先頭に立つと後続を突き放した。代打騎乗の
川田将雅騎手は「本当に強い。この馬のいいところは、乗りやすさと切れ味。ぜひ三冠へ、このまま無事に行ってほしい」と絶賛した。この勝利で三冠達成は大きく近づいた。
秋緒戦の
ローズSも危なげない勝ちっぷりだった。しかも、春二冠とは異なり2番手からの抜け出しだった。
秋華賞の舞台となる京都内回り2000mは先行有利。だから、本番を見据えて“前”の競馬を試したのだ。「どんな競馬でもできることを証明したい」という
岩田康誠騎手の狙いは成功し、三冠獲りへ向けて盤石の態勢を整えた。
だが、三冠はそう簡単ではなかった。まず本馬場入場後、大歓声に驚いた
ジェンティルドンナが岩田騎手を振り落とす。ただ、岩田騎手が手綱を離さなかったので放馬することはなく、再騎乗して返し馬へ向かった。
レースは
ヴィルシーナの先行策で幕を開け、
ジェンティルドンナは中団後方の外を進む。流れが落ち着いたように見られた800m過ぎ、
チェリーメドゥーサが一気のまくりで先頭に立ち、後続を大きく離して逃げる。直線を向いても6馬身ほどの差があったが、4コーナーからスパートした
ジェンティルドンナが外から猛追し先頭へ。しかしその瞬間、2番手を追走していた
ヴィルシーナが内から馬体を併せ、2頭が並んでゴール板を駆け抜けた。
写真判定にもつれ込む大接戦は、わずか7cm差。勝利の女神は
ジェンティルドンナに微笑んだ。レース後、「道中は外々を回らされる形になり少し馬が怒っていたが、
オークスだけの脚を使えると能力を信じて乗った。抜け出して遊ぶところがあったし、
ヴィルシーナもすごい能力を持った馬なので最後まで気は抜けなかった」と激戦を振り返った岩田騎手だが、確定前に勝利を確信していたようだ。レースを終え検量室前に戻ってくると、1着の枠場に
ジェンティルドンナを導き喜びを爆発させていたのである。また、
秋華賞前にはこんなことも言っていたという。「たぶん同じ3歳世代なら牡馬にも負けませんよ。もしかすると
ジャパンカップでもいい勝負をするかもしれない。それくらいの器の馬です」と。
ジェンティルドンナの父は
ディープインパクト。
秋華賞の勝利で、史上4頭目の牝馬三冠と同時に史上初の親子三冠馬が誕生した。