急に冷え込んだと思ったら、今週は日本各地で軒並み20度超え。朝晩の寒暖差も激しいため、体調を崩してしまった方は少なくないはずだ。かく言うトレセン取材班も先日、石川記者がインフルエンザでダウン。「さすがパイオニア。先取り過ぎやろ」とちゃかされていたのは記憶に新しい。とにかく、いたるところで風邪ひきさんが出没中。しかも厩舎スタッフなど“人”ではなく、“馬”に流行しているというのだから穏やかでない。
モズカッチャンで
エリザベス女王杯連覇を狙う野田助手によると、「そこらじゅうでコンコン、ゲホゲホやっているのを目にします。獣医にせき治療用の吸入器を借りようと思ったら、全部出払っちゃってて、借りられないんですよ。それぐらい今、風邪がはやっているんです」とのこと。
もちろん、馬インフルなど重篤なものではなく、開催自体に何ら影響はないのだが、ディフェンディング
ヒロインに問題がなかったのかは気になるところ。なにせ
モズカッチャンといえば、予定していた
府中牝馬Sを熱発により回避した経緯があるのだ。果たして大丈夫なのだろうか? それに対する回答は――。
「ケロッとしています(笑い)」。風邪が蔓延している状況下でも、まさにどこ吹く風らしい。
「
府中牝馬Sの1週前にジョッキーにまたがってもらって。熱発はそのときのストレスによるものだったのかも。その後せきをしていましたからね。ウイルス検査をしたので変な病気ではない。単なる風邪だったんじゃないでしょうか」
野田助手の話を総合すると、はやり風邪をひと足早くひいたとは推測できないか。石川記者ではないが、現状を見ればそう解釈できる。そんな“先取り淑女”
モズカッチャンには、もうひとつ逸話がある。
「2歳の時に鼻肺炎の予防接種をしたんです。普通の馬は40度近くまで一度熱が上がるんですが、カッチャンには全くそれがなかった。あれ?ってなりますよね。あの時は本当にびっくりしましたよ。一頭だけなんともないんですから」
ここでも他より一歩先んじて、すでに抗体を持っていたのだろうか…。正確な答えは
モズカッチャンの免疫回路しか知り得ないが、とにもかくにも若駒時代から普通の馬と一線を画す存在だったわけである。
話を戻そう。
府中牝馬S回避で予定が狂ったように見える
モズカッチャンのローテだが、そもそも
札幌記念(3着)直後に野田助手は「(女王杯に)直行するか、何か挟むか。叩き良化型のイメージでしたが、
札幌記念の内容を見れば、無理に使う必要はないかも」と口にしていた。直行という選択肢は当初からあったわけだ。
となると早めに風邪をひいておいて、本番前に体調万全でいられることのほうがどれだけ重要か。前哨戦パスは大した問題ではない。しかも…。
「さっきも言いましたが、
府中牝馬Sの1週前はミルコ(デムーロ)に乗ってもらいましたよね。熱発もそうですが、やっぱりイライラし始めていたんですよ。なので今回は精神状態を考えつつ、1週前、当週ともに助手が乗ることになったんです」
風邪の心配がなくなった上に、調整法においても一部改良に成功。一頓挫あったように見えて、実はすべてが連覇へ向けての布石と感じるのは記者だけではないはず。むしろ、あの熱発が嫌われて人気低下を招くようなら…。それはそれで馬券的に大歓迎だと思っている。
(栗東のゲーハー野郎・清水友哉)
東京スポーツ