今年の
マイルCSは、連覇を目指す
ペルシアンナイト(牡4、栗東・
池江泰寿厩舎)など、好メンバーがそろった。春の
安田記念を制した
モズアスコット(牡4、栗東・
矢作芳人厩舎)には、春秋マイルGI連覇の期待がかかる。今週の「名馬列伝」は、この『春秋マイル連覇の名馬』がテーマ。初回は1994年の
ノースフライトをお送りする。
■横綱相撲で有終の美を飾ったマイルの女王
今年の1月22日、生まれ故郷で余生を送っていた
ノースフライトは、28歳の生涯を終えた。競走成績は11戦8勝、重賞はGI2勝を含め6勝したが、このGI2勝が
安田記念と
マイルCSで、史上2頭目となる春秋マイルGI連覇だった。
デビューは3歳5月の新潟未出走戦と遅れたが、ここを9馬身差で圧勝すると4戦目の
府中牝馬Sでは古馬を一蹴して重賞初制覇を飾る。さらに翌月には、
エリザベス女王杯でGIに初挑戦し
ホクトベガの2着。デビュー半年でGI2着という能力の高さを見せつけた。
この後も阪神牝馬特別(現在の
阪神牝馬S)、京都牝馬特別(現在の
京都牝馬S)、そして牡馬相手の
マイラーズCと、年をまたいで3連勝の快進撃を続け、
安田記念へと駒を進める。
安田記念は前年から国際競走となっており、前哨戦の
京王杯SCは4着までを外国馬が独占していた。4頭は
安田記念に出走して人気上位に支持され、日本馬の最上位人気は短距離王
サクラバクシンオーの3番人気、
ノースフライトは5番人気だった。
スタートで出遅れた
ノースフライトは、腹をくくって末脚勝負にかける。
サクラバクシンオーが直線入り口で先頭に立ちリードを2馬身半差ほど広げると、
ノースフライトは外から猛追。残り200mで
サクラバクシンオーを交わして先頭へ躍り出ると、追いすがるラ
イバルたちを突き放し、重賞4連勝でGI制覇を果たした。また、2着には同期の牝馬
トーワダーリンが入り、牡牝混合GIで牝馬ワンツーフィニッシュを決めた。
夏の放牧を挟み、秋緒戦は
マイルCSの前哨戦となる
スワンSへ。先行した
サクラバクシンオーを捕らえきれず、1馬身1/4差の2着で本番を迎える。
マイルCSは、
サクラバクシンオーとの3度目の対決に注目が集まった。前哨戦で敗れたものの、
ノースフライトが単勝オッズ1.7倍の1番人気、
サクラバクシンオーが3.3倍の2番人気となる。
レースは、
サクラバクシンオーが2番手につけ、それをマークする形で
ノースフライトが4番手の外を追走する。4コーナーで
サクラバクシンオーが進出を開始すると、
ノースフライトもあわせて位置を上げていく。直線を向き、
サクラバクシンオーが先頭に立つも、すぐに
ノースフライトが並びかけ、残り200mから2頭の叩き合い。最後は
ノースフライトが
サクラバクシンオーに1馬身半差をつけて、先頭でゴールを駆け抜けた。コースレコードでマイルGI春秋連覇を達成し、
ノースフライトは競走生活を終えた。
GI3戦すべての手綱を取った
角田晃一騎手(現調教師)は、
ノースフライトが現役を引退してからも何度か牧場へ会いに行ったという。死亡の際には「落ち着いて乗れば勝たせてくれる馬でした」ととコメントを寄せた。また「負けたレースも
サクラバクシンオーや
ホクトベガといった、今思えば本当に強い馬たちと走っていたんだなと」振り返ったが、
ジャパンCの
マーベラスクラウン、
天皇賞・秋の
ネーハイシーザーといったGI優勝馬や、2冠牝馬
ベガなど、同世代の強い馬には先着している。
1年半ほどの短い現役生活だったが、厩舎で呼ばれた「フーちゃん」の愛称はファンにも広まり、いまも親しまれている。強さとともにファンにも愛された1頭であった。