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マイルチャンピオンシップ(日曜=18日、京都芝外1600メートル)栗東トレセン発秘話】
一般的に距離をこなすには、トラックで長めの距離を乗ることが必要とされる。
「なかには坂路だけの調教で長距離重賞を勝つ馬もいるし、送り出す人間の気持ちの問題なのかもしれないけどね。基本的に長い距離を持たそうとするときは、トラックでじっくり長めの調教をこなすことが多いのは確か。
マチカネフクキタルなんて、坂路で軽く乗ってからトラックに入って、長めからビッシリ調教をしていた。かなりハードに乗っていたよ」
西園調教師は
マチカネフクキタルを管理していた二分厩舎の所属ジョッキー時代、その調教量の豊富さに目を丸くしたという。
父クリスタルグリッターズ、母
父トウショウボーイという血統には3000メートルを乗り切る下地があるようには思えない。それでも
菊花賞(1997年)を勝ってしまったのは、スタミナ強化の調教が確実に効いていたのだろう。
で、ここからが本題。トラックで長めを乗るのが長距離向きとするなら、反対に4ハロンを一気に駆け上がる坂路調教は短距離向き? そんなイメージは競馬ファンのなかにもあると思う。実際、距離が短くなればなるほど、出走馬の追い切りは坂路が多くなる。今年の
マイルCS出走馬の中にも、ここ最近になって坂路オンリーに調教方法を特化させた馬がいるとなれば、その変化に注目しない手はない。
アルアインは今年4月の香港遠征(クイーンエリザベスII世C・5着)時に、周回コースでの追い切りを嫌がったため、それ以降は、デビューから続けてきた坂路&トラックの併用をやめて、“坂路専門ランナー”に変わった。もともとは馬の機嫌を損ねないための調教法の変更なのだが…。この変化が
アルアインの距離適性にも大きく影響を及ぼしているのでは? というのが坂路野郎の推論だ。担当の音瀬助手は言う。
「以前は坂路ではそんなに時計が出なかったのに、最近は坂路での追い切りに慣れてきたのか、いいタイムが出るようになりました。坂路だけの調教だと負荷の面で心配があったから、この秋からプール調教も取り入れているんですが、その効果もあってか、トモがしっかりしてきた感じも受けます」
2012年の勝ち馬
サダムパテックなど、もともと
天皇賞・秋からの転戦馬が結果を出しているのが
マイルCS。そこからの転戦馬で(しかも4着善戦)なおかつ、この秋から坂路調教にシフトした
アルアイン。17年
皐月賞以来の勝ち鞍を挙げるなら、この1600メートルのGIじゃないかとみている。
(栗東の坂路野郎 高岡功)
東京スポーツ