安田記念の前哨戦
マイラーズCでは、
サングレーザー、
エアスピネルらと接戦の2着に好走しながら、
安田記念では9番人気だった
モズアスコット。しかし、その低評価を覆し、この秋も活躍中の
アエロリットや
サングレーザー、
リスグラシューなどの強豪を抑えて、マイル王の座を手にしました。
今年の
安田記念は、1分31秒3のレコードタイ決着が示すように、前半3F目から後半2F目までが11秒2〜11秒4という淀みない流れ。例年は3〜4コーナーで息が入るため、高速馬場でも1分32秒台で決着することもあり、しっかりと息を入れた場合には、
ロゴタイプが逃げ切った2年前のように、1分33秒0で決着することもあります。
確かに速い時計が求められる中、出負けして
サトノアレスや
リスグラシューが後方から3〜4コーナーの外々を回るロスがあったのに対して、
モズアスコットは内々でスムーズに流れに乗れていました。しかし、同じように内々を立ち回った
アエロリットや
スワーヴリチャード、
サングレーザーなどを撃破していることは評価できるでしょう。
ただし、
モズアスコットだけが、決定的に恵まれた点が1つだけあります。それは連闘策だったということ。他国よりも高速馬場の日本は、脚元への負担(筋疲労)が考慮されて、レース間隔を開けてレースに出走することが多いですが、直前のレースで走っていなければ、連闘策でも問題ありません。むしろパフォーマンスを上昇させることが多いです。
モズアスコットは、オープンの安土城Sで格下馬を相手に2着に敗れたことと、連闘策が嫌われ、
安田記念では人気が暴落しましたが、実はそれがカンフル剤となって好走したのです。私は前記の理由から
安田記念では、
モズアスコットを本命◎としましたが、今回は
安田記念時ほど条件が揃っていません。
休養明けの前走・
スワンSは、管理する矢作師がコメントしているように、叩き台の一戦。2着に負けたからと言って、評価を落とす必要はありません。今回での上積みも見込めるでしょう。しかし、
安田記念と同等レベルのメンバー構成でありながら、連闘策ではないことが不安です。これならば他馬にも付け入る隙はあるでしょう。
もちろん穴馬にもチャンスがあります。2000年の
アグネスデジタルや1995年の
メイショウテゾロのように、人気薄で好走している馬の大半が3歳馬です。春からこの時季にかけて、一回りも二回りも成長するからでしょう。その中でも昨年のこのレースの覇者
ペルシアンナイトのように、前哨戦で惨敗、大敗している3歳馬が最大の穴メーカーです。
3歳馬の中でもピックアップしたいのは、この春の
NHKマイルCでも◎に推し、優勝したケイアイノーテックです。
朝日杯FSや
毎日王冠でも
ステルヴィオとの末脚比べで見劣りしましたが、同馬の優位性は、休養明けの前走・
毎日王冠で内枠から積極的に出していって末脚が不発したこと。つまり、前哨戦で叩き台のレースができたことです。
さらにもう一頭挙げると、出走頭数が少ないながらしばしば穴を開ける牝馬です。その中でもピックアップしたいのは、
ヴィクトリアマイルの3着馬
レッドアヴァンセ。同馬は3歳時はガレてレースに出走してくることもありましたが、最近は450kg前後で体重キープが出来ています。管理する音無調教師が、「生涯で一番いい」とコメントしているのも、その辺りからでしょう。
レッドアヴァンセは、春の
ヴィクトリアマイルも
アエロリットを負かしに行ってのクビ差3着でしたし、前哨戦の前走・
富士Sでもレースが流れた中で、終始外々を回って、
エアスピネルや
ペルシアンナイトに先着。
ペルシアンナイトは、直線で馬群を捌き切れなかったところはありますが、
エアスピネルを楽に退けていることは評価できます。(文=山崎エリカ)
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1番人気が5連敗中と、波乱を予感させる
マイルチャンピオンシップ。マイル戦の予想が得意な2名の予想家の決断はいかに?