今年の
マイルCSで上位人気が予想されるのは、春秋マイルGI連覇を狙う
モズアスコットら4歳馬たち。現4歳馬は「最強世代」と称されることも多いが、かつて「最強世代」と呼ばれたなかからも、春秋マイルGI連覇を成し遂げた馬が誕生している。『春秋マイル連覇の名馬』、今回は1999年の
エアジハードをお送りする。
■レースレコードの完勝劇で春秋マイルGI連覇を達成
97年、2歳12月にデビューした
エアジハードが本格化したのは、翌98年の秋。900万(現在の1000万)条件から
富士S(GIII)まで3連勝し、重賞初制覇を果たしたのだ。
富士Sの勝利後、管理した伊藤正徳調教師は「この馬は
タイキシャトルの後継馬になれる」と、前年に引退したマイル王の名を口にしたという。その後は翌春のマイルGIを視野に、休養に入った。
99年は
谷川岳S(4歳以上OP)と
京王杯SC(GII)で連続2着。
京王杯SCには、前年の
グランプリホースで同期の
グラスワンダーが、
有馬記念以来の実戦として出走する。
グラスワンダーには直線で一気に交わされたものの、先行勢による競り合いは制しての2着で、春の最大目標である
安田記念に駒を進めた。
安田記念は、単勝オッズ1.3倍の断然人気に
グラスワンダー、
エアジハードは17.7倍の4番人気だった。
ハナに立ったのは
アグネスワールドで、
グラスワンダーは中団、
エアジハードはその後ろからレースを進める。前走の敗戦をふまえ、それまでの先行から差しに戦法を変えたのだ。3コーナー半ばから
グラスワンダーが動き出すと、
エアジハードもその後ろをついていく。直線を向き、馬場の真ん中から
グラスワンダーが抜け出すも、外から
エアジハードが馬体を寄せ並びかけた。ほぼ同時のゴールは、ハナ差で
エアジハードに軍配が上がった。前走とは逆で、
エアジハードが
グラスワンダーを差し切ったのである。
グラスワンダーに勝つために取った陣営の作戦が成功し、初のGIタイトルを手にした。
秋は
毎日王冠から天皇賞、
マイルCSというプランが組まれた。しかし体調が整わず、復帰は
天皇賞・秋となる。ここには、
スペシャルウィークや
セイウンスカイなど、同期のタイトルホースも出走してきた。休み明けの距離延長が初めての2000mという不安材料もあった
エアジハードだったが、勝った
スペシャルウィークからクビ+3/4馬身差の3着に善戦し、本番へ向かうこととなった。
マイルCSは
エアジハードが堂々の1番人気(2.2倍)、2番人気(3.8倍)は前走の
スワンSを勝利した
ブラックホーク。ムードはこの2頭の一騎打ちだった。
予想通り、
キョウエイマーチの逃げでレースは始まり、
エアジハードは中団を楽な手ごたえで追走する。直線で逃げる
キョウエイマーチを捕らえ、
エアジハードと一緒に伸びてきた
ブラックホークを振り切って抜け出すと、ゴール前で外から迫った同期の
キングヘイローにも1馬身半差をつけてゴール。レースレコードの完勝だった。伊藤正師が一年前にいった通り「
タイキシャトルの後継馬」として、史上4頭目の春秋マイルGI連覇を達成した。次走の
香港Cは無念の直前回避となり、通算成績12戦7勝で現役を終えた。
1995年生まれを「最強世代」「黄金世代」というファンも多い。
エルコンドルパサー、
グラスワンダー、
スペシャルウィーク、
セイウンスカイ、
アグネスワールド、
キングヘイロー、
ウイングアロー、
ファレノプシスなど、さまざまな舞台で活躍した個性派が揃っていた。この95年世代のマイル路線の顔として輝きを放ったのが、
エアジハードだった。