今年の
ジャパンカップで、史上5頭目の牝馬制覇に期待がかかる
アーモンドアイ。『
ジャパンカップ名牝列伝』では、過去に牝馬制覇を成し遂げた4頭を振り返る。今回は、2011年の
ブエナビスタをお送りする。
■前年降着の雪辱を果たす約1年ぶりの勝利
ブエナビスタの最初の
ジャパンカップは2010年。この年は
ヴィクトリアマイルと
天皇賞・秋を勝つなど、
ドバイシーマクラシックへの海外初遠征を含め
ジャパンカップまでに5戦3勝2着2回。そのなかで迎えた
ジャパンカップでは、単勝オッズ1.9倍の断然人気に推される。この年は
ブエナビスタを筆頭に、
凱旋門賞2着の
ナカヤマフェスタら8番人気までを日本馬が独占していた。
レースは1000m通過が60.7秒のゆったりとした流れ。押し出される形で先頭に立った
シンゲンが直線までリードを保ち、
ブエナビスタは道中後方から4コーナーで大外を回って位置を上げていく。そして直線ではメンバー最速の上がりを使い、好位から伸びようとした
ローズキングダムや抜け出しを図っていた
ヴィクトワールピサを捕らえ、
ローズキングダムに1馬身以上の差をつけた。
天皇賞・秋に続いて騎乗したC.スミヨン騎手は、ゴール後に観客へさらなる歓声を求めるアピールをしたり、脱鞍所ではジャンプして馬の背から飛び降りるなど、勝利の喜びをあふれさせていた。
ところが。複数の審議対象から、残り200mあたりで
ローズキングダムの進路が狭くなった件で、
ブエナビスタが内に斜行し妨害したものとして2着に降着となってしまったのである。スミヨン騎手は「関係者に迷惑をかけてしまった。ここは日本なので日本のルールに従う。ただ、能力は見せられたと思う」とコメントを残した。この年は7戦し3勝2着4回と一度も連対を外さなかったが、
ジャパンカップの2着はとりわけ悔しいものとなった。
翌2011年の
ジャパンカップも、ドバイ(この年は
ドバイワールドカップ)から
天皇賞・秋まで同じ臨戦過程で4戦したが、一度も勝利をあげられずに
ジャパンカップへ挑むこととなった。この年参戦した日本馬はGI馬が7頭、ほか重賞勝ち馬も5頭の豪華メンバー。そのなかでこれまで国内レースはすべて1番人気だった
ブエナビスタは、生涯初の2番人気での出走となった。1番人気は
凱旋門賞馬
デインドリーム、3番人気に
天皇賞・秋3着の
ペルーサが続いた。
レースはアメリカのミッションアプルーヴドがハナを切り、
ブエナビスタは好位の内を追走する。直線で前にスペースができると反応よく突き、先に抜け出していた
トーセンジョーダンに並びかけると、最後は叩き合いをクビ差制してGI・6勝目のゴールを駆け抜けた。前年の
天皇賞・秋以来、約1年1か月ぶりの勝利で、前年の雪辱を果たしたのである。
この年の春から
ブエナビスタの手綱を取ってきた
岩田康誠騎手は、ゴールの瞬間、渾身の
ガッツポーズと雄たけびをあげた。レース後には「やっと
ブエナビスタの本当の走りを見せられた。現役最強馬だということを証明できた」と話した。
ブエナビスタ関係者すべての思いが詰まった言葉だった。