2000年に
ジャパンカップダートとして創設された
チャンピオンズCで、連覇(2年連続勝利)を果たしたのは1頭のみ。今回の「
チャンピオンズCヒ
ストリー」はその唯一の馬、2010年・2011年の
トランセンドを振り返る。
■持ち味である逃げを貫き連覇を達成
トランセンドにとって最初のGI挑戦が、2010年の第11回
ジャパンカップダートだった。
この年は
エスポワールシチー、
スマートファルコンという当時のダートトップクラスが不在だったものの、
ヴァーミリアンと
キングスエンブレムの兄弟対決が見どころのひとつとされた。前哨戦の
みやこSを勝ちここに臨んだ
トランセンドは1番人気に支持された。
絶好のスタートを切った
トランセンドは1コーナーで単独先頭に立ち、マイペースの逃げを打つ。直線を向き2番手にいた
バーディバーディが並びかけようとするが、再加速してこれを振り切る。さらに、ゴール直前での
グロリアスノアの追撃も押し切り、先頭でゴール。鞍上の藤田伸二騎手は人差し指を天高く突きあげた。
コースレコードまで0.4秒という好タイムで、GI初挑戦にして頂点に立った
トランセンド。レース後の藤田騎手は「スピードがあるので、この馬の競馬をしてリズムさえ保てれば、少しくらい時計が速くても大丈夫と思っていた。前走と似たようなメンバーで外国馬も不在だったので勝ちたかったし、
トランセンドも頑張ってくれた。GIホースになったので、今後は胸を張って勝ち続けたい」と語った。
藤田騎手の言葉通り、その後の
トランセンドはダート路線をリードした。2011年は
フェブラリーSで国内GI2連勝。また、
ドバイワールドカップでは僅差の2着ながら、
ヴィクトワールピサとのワンツーフィニッシュで、東日本大震災直後の日本に感動と勇気を届けた。
そして、前年の
東海Sから8戦連続連対で、2度目の
ジャパンカップダートに挑む。
2011年の第12回
ジャパンカップダートは、現王者vs前王者の対決が大きな注目を集めた。もちろん現王者は
トランセンド、前王者は2年前(09年)のこのレースと前年(10年)の
フェブラリーSを制した
エスポワールシチーである。
人気は
トランセンドが単勝オッズ2.0倍の1番人気、前走の
みやこS圧勝で王座奪還を期待させる
エスポワールシチーが2.8倍の2番人気。3番人気の
ヤマニンキングリーは13.8倍だったから、2頭の頂上決戦がいかに注目されていたかがわかるだろう。
連覇か返り咲きか、ゲートが開いた。大外枠が不安視されたものの、
トランセンドが1コーナーで内へ切れ込んでハナに立ち、
エスポワールシチーは直後で
トランセンドをぴったりとマークし、4コーナーからじりじりと迫っていく。しかし
エスポワールシチーは、直線に入り伸びを欠く。対して、
トランセンドの脚色は衰えず、最後はリードを広げて2馬身差でゴール板を駆け抜けた。「前で競馬をしてこそ力を出す馬。行って負けたら仕方ないという気持ちで思い切ったレースをした。そのくらいのデキでもあった」と、藤田騎手は逃げを貫いたレースを振り返った。
トランセンドの武器は、自らでペースを作れる強さと圧倒的なスピード。それを活かした藤田騎手の迷いのない騎乗が、史上初の
ジャパンカップダート連覇を呼び込んだのである。