ミルコ・デムーロが騎乗する1番人気の
ルヴァンスレーヴは、内の2番枠からポンと速いスタートを切った。
「ちょっと入れ込んでいたけど、いつもどおり。前はスタートがよくなかったけど、だんだんよくなっている」
デムーロはそう振り返り、つづけた。
「出して行かなくても、いいところを取ることができた。ずっと馬なりでした」
スッと2、3番手の内につけ、1コーナーへと入って行った。
過去8戦でこうして先行したことはなかったが、
萩原清調教師が「まだ競馬の形が定まっていない」と話していたように、「形」を持たずに結果を出しつづけているところが、この馬ならではの強さでもある。
紅一点の
アンジュデジールが単独でハナを切り、向正面へ。
ルヴァンスレーヴは
アンジュデジールから2、3馬身離れた2番手の内を、引っ張り切れないほどの手応えで進んでいる。
その外に
ヒラボクラターシュ、
インカンテーションという8枠の2頭がいて、さらに2馬身後ろにアメリカのパヴェルと、ジョアン・モレイラの
サンライズソアがつづく。
1000メートル通過は1分01秒9。馬群が縦長になっているわりには、さほど速くはない。
アンジュデジールが先頭のまま直線へ。
ルヴァンスレーヴはその直後にいる。
ラスト200メートル地点の手前で、デムーロは
ルヴァンスレーヴを
アンジュデジールの真後ろから外に持ち出し、
ゴーサインの右ステッキを入れた。
そこからは独壇場だった。
ルヴァンスレーヴは見る見る後続を突き放し、2馬身半差でフィニッシュ。勝ちタイムの1分50秒1はレースレコードタイ。速いタイムへの対応力を心配する声もあったが、あっさり吹き飛ばした。
「素晴らしい馬です。クリストフ(・
ルメール騎手)が『ダートの
アーモンドアイだ』と言っていましたが、本当ですね」
デムーロの言葉どおり、直線での抜け出し方まで、
ジャパンカップを勝ったときの
アーモンドアイに似ていた。
2着は8番人気の
ウェスタールンド。離れた最後方にいながら、4コーナーでワープするように内を回った
藤岡佑介の好騎乗だった。
これが
ルヴァンスレーヴにとって、
JRA・GI初制覇であったが、交流GIを含めるとGI4勝目、今年だけで3勝目だ。
JRA賞の
最優秀ダートホースは当確だろうが、
最優秀3歳牡馬の座もグッとたぐり寄せたのではないか。
来年の
ドバイワールドカップ、米国ブ
リーダーズカップへと、夢はひろがる。
(文:島田明宏)