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運なかったようで運があったベルスール/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2018年12月05日(水) 18時00分
 阪神JFに登録していたアルテミスS3着馬エールヴォアが、前日の500万下・エリカ賞(阪神芝内2000メートル)に向かうことを早々に決めた。収得賞金900万円以上の出走確定馬が15頭。エールヴォアを含めた賞金400万円の抽選組8頭すべてが出走の意思を示しても、3頭は出られるのだが…。その望みをあっさり捨てたということなのか。

「いいジョッキーもいませんでしたし、エリカ賞の2000メートルという距離も、この馬には合っていると思いましたから。まあ、上位の馬が多くやめるとなれば、話は別ですけどね」と決断の理由を語ったのは橋口調教師。

 500万下とはいっても、エリカ賞アドマイヤベガキングカメハメハなど、名馬を数多く出してきた伝統の一戦。牡馬が相手になることだけを考えても、決して楽なレースにはならない。川田というトップジョッキーを確保しての“転向”は「逃げの戦略」ではなく、「攻めの回避」。その賭けが吉と出ることをまずは祈りたい。

 橋口調教師が転向の理由のひとつとして挙げた「いいジョッキーがいない」。これは毎年、阪神JFで起きる問題だ。近年はずっと香港国際競走と同日に開催されており、トップジョッキーの多くが香港に回る。今年もルメール、M.デムーロ、モレイラ、ビュイック、川田らが渡航。残る少ないトップ騎手をいかに早く押さえるかが阪神JFにおいて重要なポイントになっているのだ。

「デビュー2戦(新馬1着→ファンタジーS2着)で乗っていた田辺さんがグレイシアに乗るというので、当初は和田さんに頼んでいたんですが、その和田さんが落馬負傷してしまって…。替わりにアヴドゥラが乗ってくれることになったのは幸いでした」

 こう話すのはベルスールを出走させる今野キュウ舎の藤原助手だ。予定騎手が次々に乗れなくなる憂き目に遭いながらも、今夏初めて短期免許で来日し、74戦14勝=勝率18.9%、複勝率37.8%と上々の結果を残した豪州の若手精鋭ジョッキーを押さえられたのは僥倖。そう、運がなかったように見えて、運があったのがこのベルスールなのだ。その大駆けにちょっぴり注目したくなった坂路野郎である。

(栗東の坂路野郎・高岡功)

東京スポーツ

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