この年の秋競馬、競馬ファン最大の関心事は、何と言っても
ビワハヤヒデと
ナリタブライアンの兄弟対決であった。兄
ビワハヤヒデは、春3戦を圧勝し古馬戦線を完全制圧。秋緒戦の
オールカマーでも危なげなく勝利を収めていた。一方の弟
ナリタブライアンも5馬身差でダービーを制して二冠達成。果たしてどちらが強いのか――。
しかし、
天皇賞・秋のレース中に
ビワハヤヒデが屈腱炎を発症し引退。この夢の対決は実現することなく終わる。
弟の
ナリタブライアンは、秋緒戦の
京都新聞杯こそ取りこぼしたものの、
菊花賞を7馬身差で制し、見事に三冠を達成。史上5頭目の三冠馬が、次走に選択したのがこの
有馬記念だった。
ビワハヤヒデだけでなく
ウイニングチケットも屈腱炎で引退。必然的に
ナリタブライアンに人気は集中し、初の古馬相手ながら、単勝1.2倍という圧倒的な支持を受ける。2番人気は天皇賞馬
ネーハイシーザー、3番人気は
アイルトンシンボリ。
レースは
ツインターボが玉砕覚悟の大逃げをみせ、速い流れで進んでいく。しかし3コーナーで早々と後退していくと、あとは
ナリタブライアンの独壇場。早めに2番手まで押し上げて、抜群の手応えで直線に向き、そのまま後続に3馬身差をつけて、この年4つめとなるG1タイトルを手にいれた。2着は外から追い込んだ重賞6連勝中の同期の牝馬
ヒシアマゾン。9ヶ月ぶりの
ライスシャワーが内を捌いて3着に上がった。
このレースに
ビワハヤヒデが出ていたら? その答えは永遠に謎のままである。