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人気2頭を前に見てウインムートが差し切る/兵庫GT回顧(斎藤修)

  • 2018年12月28日(金) 18時00分
 ラブバレットは前日の競走除外だが、サンライズメジャーはゲート入りの際に突進、負傷したことでの競走除外。すでにゲート入りしていた馬たちは一旦外に出され、スタートが10分ほど遅れた。これによって精神面で影響を受けた馬もいたかもしれない。

 今回は枠順がひとつ大きなポイントとなった。逃げると思われたマテラスカイが大外枠。2頭が除外となって実質的に10番目の枠になったのは、わずかではあるもののプラスに思われた。対して2番人気で最内枠に入ったサクセスエナジーは、これまで2番手3番手の好位追走はあるものの、逃げたことはなかった。それゆえ外枠でもマテラスカイがすんなりハナを取るであろうことが予想されたが、そうはならなかった。

 マテラスカイは互角のスタートから抜群のダッシュを見せ、そのまま一気にハナに立つ勢い。しかしサクセスエナジー松山弘平騎手は、これをうまくいなしてハナを取りきった。内で包まれて砂をかぶりたくないということはあっただろう。マテラスカイが前に行こうとするぶんだけ、松山騎手は少しずつうながして、マテラスカイを前に行かせないまま1コーナーに入った。

 ただマテラスカイ吉村智洋騎手にも迷いがあったようにも見えた。この日の第4レースを勝った吉村騎手は今年地方で289勝。兵庫所属騎手として年間最多勝記録を更新し、表彰を受けていた。船橋の森泰斗騎手を抑えて全国リーディングにも立っている。それほどの騎手が、知り尽くした地元園田コースとはいえ、断然人気に支持されたマテラスカイほどの実績馬に初騎乗となれば、平常心で臨むということも難しかったかもしれない。二の脚のダッシュの勢いを緩めずに行けばハナを取りきれたのではないだろうか。松山騎手が抵抗したあと、吉村騎手がもう一度前に行かせようとしたような場面もあったが、そうした駆け引きをしている間に1コーナーを迎えてしまった。

 しかし勝ったのは、マテラスカイでもサクセスエナジーでもなく、離れた3番人気のウインムートだった。とはいえウインムートも思い通りに運べたわけではない。マテラスカイを行かせて外に持ち出そうとしたが、外のサクラレグナムに完全にフタをされてしまった。サクラレグナムも行かせて、さらに下げて外に持ち出そうとも考えたようで、和田竜二騎手はうしろを確認した場面があった。そうしているうちに1コーナーを迎えてしまったため、そのままラチ沿いを追走することになった。しかしこれが結果的に功を奏すことにもなった。

 3、4コーナーではすでにマテラスカイが追走一杯という手応えだったので、ウインムートの和田騎手にしてみれば、あとはサクセスエナジーさえとらえれば、という展開になった。一方のサクセスエナジーにしてみればマテラスカイのスピードを封じることに成功し、3コーナー過ぎで勝負をつけた。しかし本当の敵は自分の真後ろに隠れていた、という結果だった。

 以前からたびたび言ったり書いたりしているが、ダート馬には、中央のダートが得意な馬、地方のダートが得意な馬、そして両方ともこなせる馬、というタイプがいる。マテラスカイは大井の東京盃でもハナを切りながら4着に敗れていたように、地方ダートはコース形態なども含めて合わないタイプ。対してサクセスエナジーは、今回は2着に負たものの、かきつばた記念(名古屋)、さきたま杯(浦和)を勝っているように、地方のコーナーを4つ回る1400メートル戦を器用にこなすタイプ。勝ったウインムートはこれが5歳での重賞初勝利で、地方・中央どちらが得意かというよりも、人気2頭の競り合いを前に見てレースを進めた和田騎手の好騎乗を褒めるべきだろう。

 そして3着に入ったのはダートグレード初挑戦だったキクノステラ。4着のサクラレグナムも4コーナーではマテラスカイの直後で見せ場があった。この2頭の好走は、それぞれ51kg、52kgというハンデによるところも大きい。

 地方競馬で行われているダートグレードのハンデ戦では、最低で51kgか52kg、最高で60kg程度という範囲に収めなければならないが、ハンデの範囲を能力差がはるかに超えていることが常で、重いハンデを背負った馬があっさり勝つという場面もままある。しかしこのレースでは2013年に51kgのエプソムアーロン(高知)が2着、2014年には53kgのジョーメテオ(浦和)、サクラシャイニー(高知)がそれぞれ2、3着に好走するなどハンデ差がしっかりと機能している。しかしながら第18回の今回まで1頭も地方馬の勝ち馬が出ていないのは残念なところではある。

 笠松グランプリ快勝から万全の状態で臨んでいたと思われた地元期待のエイシンバランサーは、向正面から追い通しとなってまったく能力を発揮していない。

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