2007年の
武豊・
スズカフェニックスを最後に、11年間も1番人気の馬が勝っていない
東京新聞杯。
嫌なジンクスがつづくなか、1番人気に支持されたのは、
福永祐一が乗る2連勝中の
インディチャンプだった。
ゲートが開き、15頭が良馬場の芝コースへと飛び出した。
その
インディチャンプが、やや立ち上がるような格好で1馬身ほど出遅れた。
しかし、すぐに体勢を立て直し、福永が手綱で促すと、スルスルとポジションを上げて行く。出遅れてポジションを取りに行くと、その先で折り合うのが難しくなることがままあるのだが、
インディチャンプにとって幸いなことに、全体の流れが速くなった。
ショウナンアンセムがハナを切り、
ロジクライ、
ヤングマンパワーらがつづく。前半800m通過は45秒7。後半800mの46秒2よりコンマ5秒速い前傾ラップとなった。
インディチャンプは、15馬身ほどの縦長になった馬群の中団の内を、いいリズムで進んでいる。
内枠を生かし切り、
インディチャンプを冷静にエスコートした福永騎手の好騎乗
ショウナンアンセムと内の
ロジクライがほぼ横並びになって直線に入った。
その4馬身ほど後ろの内に
インディチャンプがいる。
ラスト400m。
ロジクライがやや前に出て、粘り込みをはかる。
真後ろにつけていた
インディチャンプは、
ロジクライと、やや遅れた
ショウナンアンセムとの間にできたスペースに進路を取った。
「脚が溜まっていたので、どうさばこうか考えながら乗っていました」と福永。
タワーオブロンドンも同じスペースを狙い、
インディチャンプの外に併せてくるかに見えたが、勢いが違った。
インディチャンプは瞬時に馬ごみから抜け出し、福永の右ステッキを受けて、独走態勢に入った。
一時は2馬身ほど前に出たのだが、外から
レッドオルガ、内から
サトノアレスが猛然と追い上げ、差を詰めてくる。
最後は
レッドオルガに半馬身差まで詰め寄られたが、
インディチャンプは手応えに余裕を残したまま先頭でフィニッシュ。3連勝目を重賞初制覇で飾った。
勝ちタイムは1分31秒9。けっしてスムーズなレースではなかったが、着差以上に強い競馬だった。ハイレベルな4歳馬が、マイル王争いに名乗りを上げた。
スタート後に立て直してから、内の2番枠を生かしてポジションを上げた。簡単には下がってこない
ロジクライの後ろから、タイミングをはかって抜け出した福永の冷静なエスコートが光った。
(文:島田明宏)