7頭立ての少頭数とはいえ、昨年の2歳王者
アドマイヤマーズをはじめ素質馬が揃った第53回
共同通信杯のゲートが開いた。
最初の10完歩ほどで
アドマイヤマーズが体半分ほど前に出て、そのままハナに立った。パドックや返し馬からテンションが高かったため、中途半端に抑えて引っ掛かり、フットワークを乱すよりは、流れが落ちつきそうなここは行ったほうがいいと鞍上の
ミルコ・デムーロが判断したのだろう。軽く手綱で促して進み、先手を取り切ってからしっかりと抑えて折り合いをつけた。
2番手はクリストフ・ ルメールの
フォッサマグナ、内の3番手に
戸崎圭太の
ダノンキングリーがつけている。
「馬がよくなってワクワクしていた。2歳チャンピオンを前に見る、いい形で行くことができました」と戸崎。
先頭から最後尾まで8馬身ほど。800m通過が49秒5、1000m通過は1分1秒5という、ゆったりした流れになった。
3、4コーナー中間の勝負どころでも
アドマイヤマーズが持ったままで先頭、
フォッサマグナが2番手で、外から
ナイママが並びかけてきた。
ダノンキングリーは
アドマイヤマーズから2、3馬身後ろの内埒沿いで脚を溜めている。
アドマイヤマーズが先頭をキープしたまま直線に入った。
半馬身ほど遅れた外の
フォッサマグナ、
ナイママなどが激しく追われるが、前との差はなかなか詰まらない。
ラスト400mを切ってデムーロが手綱をしごいてハミを当て直し、後ろを突き放しにかかった。
外の馬たちは置かれ出したが、内から
ダノンキングリーが伸びてきて、ラスト200m地点で並びかけた。と思ったら、もうかわして先頭に立っていた。デムーロは
アドマイヤマーズを右ステッキで叱咤する。が、戸崎は手綱の指示だけで追い、1馬身ほど抜け切ったとき初めて右ステッキを入れた。気を緩めさせないためだろう。
ダノンキングリーが
アドマイヤマーズに1馬身1/4差をつけ、先頭でフィニッシュ。無傷の3連勝で重賞初制覇を遂げた。2頭の後ろは4馬身ちぎれていた。
「この馬に乗れることを幸せに思います」という戸崎のコメントは、最上級の褒め言葉と言えよう。1番枠を生かして内をコースロスなく進むなど、すべてが上手くいった結果の勝利ではあるが、上がり3F32秒9の末脚で突き抜けた力は本物だ。
キズナや
リアルスティール、
エイシンヒカリなどと同じ
父ディープインパクト、母の父ストームキャットという「黄金配合」でもあり、クラシックの有力候補に躍り出た。
アドマイヤマーズは、初の関東、初コース、初距離、57kg、さらにスタートで外の馬にぶつけられたりと、厳しい要素が重なった。直線で内から
ダノンキングリーに並ばれたとき、手前を左に戻した(かわされてから、また右手前にした)のは、苦しくなったからか。それでも2着を確保したのだから、さすが2歳王者だ。
(文:島田明宏)