皐月賞の「王道
トライアル」たる
弥生賞を迎えると、クラシックの蹄音がグッと身近に迫った感覚を覚える。だが、それ自体がすでに時代錯誤ではないか。そんな危惧も同時に抱いている。
近8年の
皐月賞馬の前哨戦をひもとけば、
共同通信杯4回、
スプリングS3回、
毎日杯1回。
弥生賞からのVは10年
ヴィクトワールピサまでさかのぼる。「王道」と扱うのがためらわれる近年の傾向だ。昨年の
ホープフルS優勝馬
サートゥルナーリアが下した「
皐月賞ぶっつけ」の決断、むしろそれが最も
トレンディーな「王道」である可能性も否定できない。
だからであろうか。今年の
弥生賞組には相手関係を気にする様子があまり見られない。垣間見えるのは“王道”を
スキップしたラ
イバルへの敵対心である。
「
ホープフルS(3着)は2角で4番手に位置しながら、4角では9番手。優勝馬
サートゥルナーリアがギリギリまで脚をためたことで、その背後に位置したこの馬は、さらに追い出しが遅れる形になってしまった。スムーズなら2着はあったと思うけど、相手の脚を測るという意味で無駄ではなかったはずです」
こう語るのは
ニシノデイジーの
高木登調教師。
JRA賞(
最優秀2歳牡馬)を懸けた一戦だったゆえに結果は無念だろうが、矛先はすでにリベンジに向けた戦いだ。
「まだ緩さは残るけど、放牧を挟んで全体にボリュームアップ。乗り難しさはあるが、中山も2度目になるし、とにかく
皐月賞が見える走りを見せてほしいですね」
一方で、新馬→
京成杯を連勝した
ラストドラフトは、斎藤助手が次なる言葉をエールに代えて送り出す。
「
京成杯はハナに行きそうだったけど、1角でスッと収まったのが驚きでした。普段は幼さ全開の馬で、稽古はムキになるし、パドックや返し馬も危なっかしい。それが競馬に行くと優等生に変わるから不思議です。本当に良くなるのはこれからでも、現状でクリストフに“捨てがたい”と思わせる競馬を期待しているんです」
皐月賞で
サートゥルナーリア騎乗が決まっているルメールをあえて乗せるのも、実は陣営の“この馬もGI級”という自負の表れである。
ちなみに、
ニシノデイジーが92年
桜花賞馬
ニシノフラワーのひ孫なら、
ラストドラフトは11年
桜花賞馬
マルセリーナの長男。そして両馬の激突にかかるのは、05年
オークス馬
シーザリオの子=
サートゥルナーリアへの挑戦権。クラシック年表が鮮やかによみがえる今年の
弥生賞…。やはり胸を張って当方は「王道」と呼ばせてもらう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ