女性騎手減量新ルールが適用された先週、現在唯一の当事者である
藤田菜七子がさっそく小倉で勝利(通算51勝目)を挙げた。勝ち馬(
アラスカノオーロラ)の管理者・
小島茂之調教師は「(3キロ減は)僕らも狙っていたこと。今後(新ルール)は彼女の騎乗を斤量が後押しするのは間違いない。(新人と)4年目の3キロ減は全然違う」。この言葉からも、有力馬の依頼が増加するのは必至だろう。それでも…。
「ありがたいことですが、今まで(男性に)負けたくないという気持ちでやってきたので…。複雑です」
こう明かした菜七子の心境は理解できる。デビューから注がれ続けるのはジェンダー的な関心。もっかの話題は技術より斤量面。描く理想に到達し切れないジ
レンマが、言葉の端々に見え隠れする。おそらく彼女が欲する肩書は「女性騎手・菜七子」ではなくシンプルな「藤田騎手」なのだろう。その道のりは険しくとも、チャンスを生かし続ければ道は開けるに違いない。
さて、今週中山の土日(9、10日)メインもその立ち位置はなかなか「複雑」だ。土曜・
中山牝馬Sは
グレード制導入後、優勝馬によるGI制覇が皆無。その後に重賞を勝った馬も、近10年では15年
バウンスシャッセ(
愛知杯)、11年→12年連覇の
レディアルバローザしかいない。非出世レース…とまでは言わないが、将来性は不問の舞台。とにかく「旬」を買うべき一戦だ。
一方、日曜・
アネモネSも存在意義は微妙だ。中山施行に変わった00年以降、優勝馬の
桜花賞成績は01年
ダイワルージュ、08年
ソーマジックの3着が最高。今年の登録馬17頭がすべて1勝馬という現実が、本番と乖離する
トライアルであることを象徴している。
それでも飛躍を期待したい駒はいる。「この馬はガソリン切れの
アーモンドアイ。素材はいいんだけど…」と佐藤勝美助手がデビュー前に語っていた
ディープインパクト産駒レッドアステルだ。中山千六の初陣は好位3番手からスッと抜け出して完勝。センスの良さはもちろん、その走りは数字以上のスピード感にあふれていた。
「まだまだ食いが細いのがネックだね。しっかり食べてしっかり稽古ができれば、かなり上まで行けるはず。その意味で相当物足りなさを感じるけど、1勝馬同士ならヒケは取らないのかな」と佐藤助手。依然としてシビアな
ジャッジだが…。
“ガソリン切れ”の肩書さえ取れればゆくゆくはGI級。まだ理想に遠い姿でも、勝つことにより同馬の未来も開けるはずだ。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ