GI馬8頭が顔を揃えた第63回
大阪杯のゲートが開いた。
14頭の出走馬は、ほぼ横並びのスタートを切った。
正面スタンド前で、4番
エポカドーロがハナに立った。
外から6番
キセキ、13番
スティッフェリオらが迫ってくるが、1馬身ほどのリードを保ったまま1、2コーナーを回った。
昨年の
皐月賞馬が引っ張る流れのなか、一昨年の
皐月賞馬で、3番枠から出た
アルアインは、内の4番手につけている。
「枠がよかったし、どの馬が行くかも読みやすく、理想的な展開になりました。好位のインで競馬をしたいと思っていて、イメージどおりでした」
アルアインに騎乗した
北村友一はそう振り返る。
エポカドーロ、
キセキ、
スティッフェリオ、
アルアインという馬順のまま、前半1000mを1分1秒3で通過した。午前中は稍重で、午後から良発表になった柔らかめの馬場を考慮してもスローな流れだ。
アルアインの斜め後ろに
ステルヴィオ、
ダンビュライト、その後ろに
ワグネリアン、
エアウィンザーらが控えている。
やや重心を後ろにかけ、手綱を引きながら騎乗馬をなだめていた北村の重心が、少し前に移った。
「行きっぷりはよかったです。馬の気分を害さないにだけ気をつけて乗りました」
アルアインは、逃げる
エポカドーロを1馬身半ほどの射程にとらえたまま3、4コーナーを回り、直線へ。
北村は迷わず
アルアインを
エポカドーロの内に入れ、
ゴーサインを出した。
「追い出してからの反応が抜群によかった。坂を上ったらふわっとする癖があって、今日もソラを使ったけど、気分を害さないよう、あえてステッキを入れないようにしました」
アルアインはラスト200m地点で先頭に立った。外から追い上げてくる
キセキ、内から伸びてくる
ワグネリアンに迫られても、北村はノーステッキで追いつづける。
「いつも善戦してくれるのに、気持ちが最後まで続かない。そこに気をつけて、どうしたら集中してくれるのかを考えて、一生懸命乗りました」
ラ
イバルに詰め寄られて焦ったはずだが、それでも北村は鞭を使わず、手綱をしごきながらハミを強く当てなおす扶助で
アルアインを叱咤し、勝利をもぎ取った。騎乗馬のメンタル面を考えつづけ、馬の気持ちに騎乗するかのような見事なレースであった。
アルアインにとっては、一昨年の
皐月賞以来、約2年ぶりの勝利となった。デビュー14年目の北村にとっては、これが初めてGIタイトルであった。
(文:島田明宏)