馬の強さを一番知っているのは騎乗しているジョッキーや管理している調教師。もちろん、それも正解なのだろうが、一緒に走ったラ
イバル陣営が、肌で感じた強さというのも説得力がある。
「勝てる」と思ったレースを土壇場でひっくり返された――。そんなとき、驚異的な相手の能力をハッキリと感知するのだろう。
エルフィンSで2着に敗れた
ブランノワールを管理する須貝調教師が、レースを振り返って、しきりに強調していたのは勝ち馬の強さだった。
「いや〜、勝った馬は強かった。勝ちにいく競馬でウチのがなんとか押し切れるかなと思ったんだけど…。あれは相手を褒めるしかないよな。ホント、勝ち馬は強かった」
苦笑いとともに出てきたのは勝った
アクアミラビリスの末脚への賛辞ばかりだ。
それもそのはず。
エルフィンSで
アクアミラビリスが駆使した上がり3ハロン33秒3の決め手は、年明けの1、2回京都競馬の中で最速の数字。しかも、今年の京都芝といえば、やけに時計がかかるコンディションでの開催が続いた。その中での33秒3は“本来の芝”に換算すれば、おそらく32秒台の脚だっただろう。
「あの時計のかかる馬場で、ウチの馬以外に33秒前半の脚を使った馬なんておそらく1頭いるか、いないかだったんじゃないか。相当な決め脚を持っているのは確か」とは管理する吉村調教師だ。
レース後には
ブランノワール以外のラ
イバル陣営からも「オープンなんか使ってこないでくれ。重賞に使う馬やんか」という声も飛んだという。
半姉の
クイーンズリングはデビューから3連勝(新馬→
菜の花賞→GII
フィリーズレビュー)。
桜花賞出走時点での実績では、3戦2勝でオープン特別勝ちだけの妹のほうが劣るが、完成度としてはこちらのほうが上だとトレーナーは言う。
「
クイーンズリングはこの時期、まだ硬さがあったし、腰回りもかなり緩かった。それに比べると妹のほうがしっかりしている」
実際、姉はこのころ、電気治療などが欠かせなかったが、妹にはそんなケアをする必要がないのだという。
2戦目のGIII
フェアリーSでは道中ガッツリひっかかったことで5着に敗れており、「流れに乗ったレースができるか、不安はある」と話す吉村調教師だが、前走のようにじっくり折り合いに専念して、しまいにかければ、2歳女王
ダノンファンタジーも使ったことがないような末脚を使える。これは「形勢逆転」と同時に、一気に「勢力逆転」も望める脚だ。
姉
クイーンズリングも担当した矢野キュウ務員は2015年の
桜花賞出走時、「GIゼッケン(登録馬のアイウエオ順に数字が割り当てられるGI競走用の特殊ゼッケン)が4番なのは、4連勝で
桜花賞を勝つことの暗示」と豪語し、結果4着というオチをつけた人物。
今回の
アクアミラビリスのGIゼッケンは2番。「姉が勝てなかった
桜花賞を“2度目の正直”で勝つという意味や」と、またしても危険な予告?をしているが…。
今度は結果2着というオチがついても、「連対確保」と格好はつけることになる。それならそれでOKってことで、今年は
アクアミラビリスと心中する覚悟である。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ