桜花賞での復権を期待した
グランアレグリアが見事に戴冠。振り返れば現3歳世代の新馬戦開幕週に当欄で取り上げたトップバッターだけに、結果が伴ったことは本当にうれしい限りだ。
フローラSに登場する
ウィクトーリアも当欄登場は今回が初めてではない。前回は昨夏の
札幌2歳S出走時に取り上げた。
母ブラックエンブレムは2008年
秋華賞の勝ち馬で、POGで産駒が毎年、注目を集める血統。しかも函館芝1800メートルの新馬戦でレコードVとあって注目度もそれだけ高かったからだ。結果は7着に敗れたが…。
当時の取材ノートを改めて見返すと、ハナを切ってレコードを叩き出したスピードを評価する一方で、「同じように逃げるか、それとも控えるか。選択が難しくなった」と小島調教師は苦悶のコメント。同時に「もう少し気楽な立場で出走できればいいんだけど…」と目標にされる難しい状況を危惧していた。
それから約半年。
ウィクトーリアは
赤松賞5着後の2度目の自己条件を快勝した。ルメールが手綱を取った当時の戦法は新馬戦以来、封印していたかに見えた「逃げ」。これで通算成績は4戦2勝ながら“逃げた時”に限れば2戦2勝に。
そこから今度は約2か月。果たして昨夏以降にどれだけの変化があったのか、改めて小島調教師に聞いてみると「今回は淡々と(調教を)やって逃げればいいだけ」とシンプルな返答。つまりは“あれこれ考える必要がなくなった”のだろう。
「田辺が乗った2走も状態は決して悪くなかった。あそこまで負けるはずはないと思っていたんです。それで前回は“逃げてみようか”ってなったら楽勝でしょ。不思議ですよね、馬って。ジョッキーは、みんな“逃げなくても勝てる”と言ってたし、牧場からも“調教でも番手のほうが楽ですよ”って言われてたんだけどね」(小島調教師)
逃げるか、逃げまいか、頭を悩ませていたのは、もう過去の話。さらに今回の出走過程も、いわゆる
オークスを目標にした
トライアル挑戦というレース選択とは少々、意味合いが異なるようだ。
「前走を使って、かなりガタッときたんですよ。それでオーナーサイドとも“(6月30日の)
ラジオNIKKEI賞でもいいのでは?”って話をしていたんです。それが牧場での回復が思いのほか早く、帰厩しての状態もいい感じ。クリストフ(ルメール)は前走後に“2000メートルまでは大丈夫”と言っていたし、東京の開幕週の馬場で逃げられるのは大きいからね」
オークスへのこだわりより、“まずは目の前の重賞を”の意識が強いように映る。そして「母親も調整には相当、苦労したんです。でもこの馬は(難しさを受け継ぐ)兄姉と比べてもおとなしいし、我慢ができる。カイバ食いも落ちなくなりましたからね」と出走態勢は、すこぶる良好だ。
時間をかけて競馬の
スタイル(=戦法)と肉体的成長(=走れる体)を得た
ウィクトーリアが新緑の府中でどんな走りを見せるのか、大いに注目している。
(立川敬太)
東京スポーツ