平成最後の盾獲り合戦となる第159回
天皇賞・春のゲートが開いた。
出走馬13頭が横並びの綺麗なスタートを切った。
ヴォージュがハナを切り、
ロードヴァンドール、
メイショウテッコンがつづいて1周目スタンド前に差しかかった。
クリストフ・ルメールが乗る1番人気の
フィエールマンは中団につけた。
「馬が
リラックスしていた。長距離では大事なこと」とルメール。
2番人気の
エタリオウはポツンと離れた最後方を進む。
最初の1000m通過は59秒8。距離を考えるとやや速い流れになった。
1、2コーナーを回りながらペースが落ち、次の1000mは1分4秒2を要した。流れが落ちつくのを見越したかのように、
フィエールマンが外からじわっと進出して、前との差を詰めた。
管理する
手塚貴久調教師も想定していた動きだった。
「追い切りのあと、
ルメール騎手と作戦について話したとき、徐々に動いて行きたいと言っていたんです。もともとスタートは速くない馬ですからね」
2周目の3コーナーで、
フィエールマンは先頭から3、4馬身のところまで、無理なく押し上げていた。
エタリオウが外から一気に上がってきた。それに被されそうになったところで
グローリーヴェイズも動いた。その「圧」に押し出されるように、
フィエールマンは、4コーナーを回りながら持ったままで前をかわしにかかる。
「3、4コーナーで馬が走りたがっていたので、自分で動いた。戸崎さんが外から来たとき、また頑張ってくれて、ゴールまで戦った」
そう話したルメールの
フィエールマンが先頭に立ち、その外に戸崎の
グローリーヴェイズが馬体を併せて直線に入った。
2頭の壮絶な叩き合いが始まった。
戸崎が左鞭で
グローリーヴェイズを叱咤し、ラスト200mを切った。
ラスト100mあたりで、ルメールは初めて左ステッキを入れた。
一瞬、
グローリーヴェイズがかわすかに見えたが、
フィエールマンが差し返し、先頭でゴールを駆け抜けた。首差の2着が
グローリーヴェイズ。3着の
パフォーマプロミスまでは6馬身ちぎれた。
フィエールマンの鞍上のルメールは史上3人目、父の
ディープインパクトは史上4頭目となる産駒の八大競走完全制覇を果たした。
4角先頭で、ラ
イバルとびっしり叩き合って首差で競り落とすという、キャリア6戦目とは思えない、王者と呼ぶにふさわしい競馬で平成最後の頂点に立った。
(文:島田明宏)