ゴールデンウイークが明けたとなれば、予想業界が熱視線を送る、あの「VM男」に登場願うしかあるまい。一昨年の
アドマイヤリード(6番人気1着)&
デンコウアンジュ(11番人気2着)に続き、昨年も
ジュールポレール(8番人気1着)を激奨。もはやゴールが見えている「トレセン発(秘)話」高岡功記者に、第14回
ヴィクトリアマイル(12日=東京芝1600メートル)の筋書きを描いてもらおうではないか。3年連発を期す、今年の穴テーマは「血の呪縛からの解放」だ。
「競走成績」がそのまま「繁殖成績」にリンクするわけではないのは、この世界ではある意味、常識。いわゆる名牝級の競走成績を残しながらも、繁殖牝馬としてはいい子を出せないまま終わった、数多くの実例がそれを証明している。
エリモシック、
エリモピクシーの姉妹2頭を管理した沖芳夫元調教師(本紙で自身のホースマン人生をつづった「夢」を好評連載中)は、GI馬の姉
エリモシック(1997年
エリザベス女王杯)より、好走はしながらもついに重賞を勝てずに終わった妹
エリモピクシーのほうが、繁殖牝馬としては上を行くことを“予見”していたという。
「なんでって、
エリモピクシーのほうが馬格があって、腹構えもしっかりしていましたからね。そういうところが繁殖牝馬としては重要なんです。オーナーにはずっと“ピクシーのほうがいい子を産むと思います”と言っていたんですよ」
その「眼力」はさすがというべきか。これといった馬を出せずに終わった姉
エリモシックとは対照的に、妹
エリモピクシーは
リディル、
クラレント、
レッドアリオン、
サトノルパンと重賞ウイナーをすでに4頭も輩出。産駒の重賞総勝利数は11勝を数える。そして
ヴィクトリアMにも、5頭目の候補
レッドオルガを出走させるのだから、のちに平成〜令和にかけての「名繁殖牝馬」として必ず名が挙がる存在になることだろう。
エリモピクシーの子供に共通する特徴は、左回りのマイル戦にめっぽう強いが、GIを勝つにはチョイ足りない(別表=トータルで東京マイルGI3着4回)。しかし今週の
レッドオルガで、その惜敗続きに終止符が打たれるかもしれない。
「状態は申し分ないですね。正直、前走(
阪神牝馬S7着)は良化途上。カイ食いがイマイチで、毛ヅヤも冴えなかったんです。それに比べて今回はメッチャ順調にきています。あとは枠順とか、馬場とか、展開とか…。馬と僕に運があるかどうかだけだと思っています」とは担当する田中大助手だ。
言うまでもないが、
レッドオルガもまた、きょうだい共通のキャラをしっかり“踏襲”しており、とくに東京マイルは過去1・3・1・2着と複勝率100%を誇る。
「ジョッキーも言っていましたが、右回りだと、どうしても勝負どころで自分からハミを取って行かない。やっぱり血統なんでしょうか。左回りのほうが自分から進んで行けるし、スムーズなんですよね」(田中大助手)
だからこそ、陣営は早くから「GIを取るならここ」と、この血統のオハコである東京マイルの
ヴィクトリアMを目標にしてきた。手綱を取る北村友も「この馬で、この舞台を勝てないのは、まずいですよね」と自らにプレッシャーをかけているという。
エリモピクシーの初子
リディルが、初めて東京マイルのGIに挑んだのが2011年の
安田記念(7着)。個人的にはこの時、直線で前が詰まり通しになる不運がなければ、GIをあっさり勝っていたと思っているが…。そこから始まった“GIを勝てそうで勝てない”この血統の「呪縛」を、
レッドオルガに解き放ってもらいたいと思っている。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ