汗ばむほどの陽気のなか行われた第14回
ヴィクトリアマイルは、スーパーレコードの飛び出す激戦となった。
横山典弘の
アエロリットが、ゲートを出て1ハロンを過ぎてからハナに立った。同馬は前半800m44秒8、1000m通過56秒1という速い流れをつくり出した。
石橋脩が乗る1番人気の
ラッキーライラックは好位につけた。
「今日はある程度出して行ってから、ペースを見て(立ち回り方を)決めようと思っていました」と石橋。
ダミアン・レーンの
ノームコアはその
ラッキーライラックの真後ろの馬群のなかにいた。
「スタートがよく、最初にいいポジションを取ることができました。
ラッキーライラックは、レース前から、マークすべき馬としてリストに入れていました。道中の手応えはとてもよかったです」とレーン。
福永祐一の
プリモシーンは、それらを前に見ながらレースを進めた。
「五分のスタートを切ることができた。やりたい競馬はできました」と福永。
アエロリットが3馬身ほどのリードを取ったまま4コーナーを回り、直線へ。
ラスト200mを切っても
アエロリットが先頭のままだ。
「自分の競馬をして、よく頑張ってくれました」
横山がそう言ったように、この馬自身、上がり3ハロンを34秒8でまとめ、コンマ4秒差の5着となった。
ラスト100mほどのところで、
クロコスミア、
ラッキーライラック、
ノームコア、
プリモシーンが横並びになって伸びてきて、外から
アエロリットをかわし、激しく叩き合った。
大激戦を制したのは
ノームコアだった。
1分30秒5の驚異的なレコードタイムが掲示されると、場内がどよめいた。
「直線では、スペースがあるか心配だったけど、進路さえ確保できれば勝ち負けになるという自信がありました」
そう振り返ったレーンは、直線で前が塞がっても慌てず、エンジンをふかしながらスペースができるのを待ってスムーズに馬1頭ぶんほど外に持ち出し、目一杯に追った。
「まだまだ成長する馬だと思う。今日はペースが速かったのも合っていました」
萩原清調教師は、「実績のある騎手だし、彼の感覚で競馬をしてもらおうと思い、任せることにしました」と、レース前に乗り方などの指示をしなかったという。
次の最終レースも勝ったレーンは、この日3勝。前日4勝しているので、週末で7勝の固め勝ちとなった。
JRA・GI初制覇を遂げたオーストラリアの若き名手の今後が楽しみになった。
(文:島田明宏)